【早見表】土地にかかる相続税の税率とは?計算方法や注意点をわかりやすく紹介

相続した土地の価値が高額になると、相続税の負担も大きくなります。しかし、土地を相続したからといって、特別高い税率が適用されるわけではありません。相続税の金額や税率は、土地を含むすべての相続財産を合算した課税価格に応じて決定されるためです。

それでは、土地を含む遺産を相続したときは、具体的にどれくらいの相続税率が適用されるのでしょうか。

この記事では、土地の相続税率についてわかりやすく説明します。具体的な計算方法や注意点も紹介するので、土地を相続した方はぜひ参考にしてみてください。

土地を相続したら相続税はかかる?

土地を相続しても、すべての方に相続税がかかるわけではありません。相続税が発生するのは、土地を含む相続財産の合計額が基礎控除を超える場合のみです。

基礎控除額は、以下の計算式で算出されます。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
※出典:国税庁「No.4152 相続税の計算

例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、基礎控除の金額は4,800万円になります。相続する財産の合計額がこの金額以下であれば、相続税は発生しません。

土地を相続するときは、評価額の計算方法や活用できる特例もさまざまです。「土地があるから必ず相続税がかかる」と思い込まず、まずは基礎控除額や評価額を正しく把握することから始めることが大切です。

内部リンク:相続税の基礎控除とは?計算方法や間違えやすいポイントを解説

【早見表】土地の相続税率

相続税の税率は、法定相続人が受け取る財産の評価額によって決まります。

具体的な税率は、次の表のとおりです。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
※引用:国税庁「No.4155 相続税の税率

なお、相続税を計算するにあたり、土地だけに適用される独自の税率が設定されているわけではありません。土地を含むすべての相続財産の合計額に対して、上記の税率が適用されます。

したがって、土地以外の預貯金や有価証券なども合算したうえで、課税遺産総額を計算する必要があるのです。

土地は評価額が大きくなりやすいため、相続税の負担も大きくなりがちです。しかし、土地の相続では「小規模宅地等の特例」などの節税制度を活用できる場合があります。

知識や事前準備があれば土地の相続税の負担を抑えられる可能性が高いので、あらかじめ関連制度を調べたり税理士に相談したりしておくことが大切です。

土地の相続税を計算する方法

土地を相続したときは、以下の流れで相続税を計算しましょう。

  1. 相続人を確定させる
  2. 課税遺産総額を計算する
  3. 合計の相続税額を計算する
  4. 実際の取得分に応じて相続税を按分する

ここでは、各プロセスの詳細を紹介します。

相続人を確定させる

まずは、誰が相続人になるのかを確定させましょう。配偶者は常に相続人になりますが、その他の親族は被相続人の状況や、遺言の内容によって相続人になれるかどうかが変わってきます。

法定相続人の数は基礎控除額に影響するだけでなく、相続税の計算にも大きく関係します。

誰が法定相続人に該当するかわからない場合は、税理士などの専門家に相談して確認してもらうことがおすすめです。

課税遺産総額を計算する

次に、相続税の対象になる課税遺産総額を計算しましょう。

課税遺産総額は、次の式で算出できます。

課税遺産総額=相続財産の価額-基礎控除額

相続財産の価額を把握するには、まず土地の評価額を調べる必要があります。詳しい調べ方は、後で解説する「土地の評価額を調べる方法」の見出しをご覧ください。

合計の相続税額を計算する

課税遺産総額を「法定相続分に応じて相続した場合」の相続税を計算します。

法定相続分は、相続人の立場や人数に応じて決定されます。具体的な法定相続分は、次のとおりです。

相続人の状況法定相続分
配偶者+子どもが相続人の場合2分の1ずつ
配偶者+被相続人の親・祖父母が相続人の場合配偶者3分の2
親または祖父母の全員で3分の1
配偶者+兄弟姉妹が相続人の場合配偶者4分の3
兄弟姉妹の全員で4分の1

例えば、法定相続人が配偶者と2人の子どもの合計3人で課税遺産総額が8,000万円だった場合、配偶者は4,000万円、子ども1人につき2,000万円が法定相続分になります。

この金額に、先述した相続税の税率をかけ合わせると、以下のように計算されます。

  • 配偶者の相続税:4,000万円×20%-200万円=600万円
  • 子ども1人あたりの相続税=2,000万円×15%-50万円=250万円
  • 相続税の合計額=600万円+250万円+250万円=1,100万円

実際の取得分に応じて相続税を按分する

最後に、実際の遺産分割の結果に応じて、相続税の総額を按分します。遺産分割の内容が法定相続分と異なる場合は、この段階で相続税の金額を調整しましょう。

例えば、「全員に3分の1ずつ遺産を引き継ぐ」という遺言がある場合は、それぞれ「1,100×1/3=約366万円」の相続税を支払うことになります。

なお、相続人に配偶者がいる場合は、配偶者の税額軽減が適用され、相続税が課されない可能性があります。他にも、各相続人の状況によっては相続税が減免されることがあるので、個人の状況に応じて計算をすることが重要です。

土地の評価額を調べる方法

相続財産に土地が含まれているときは、相続税の計算時に土地の評価額を調べる必要があります。土地の評価方法は、利用状況によって大きく異なります。

ここでは、詳しい評価額の調べ方についてみていきましょう。

更地の場合

更地の評価方法は、場所によって「路線価方式」と「倍率方式」の2つに分かれます。

評価方法概要計算方法
路線価方式国税庁が発表する路線価を用いた計算方法路線価×持分×面積(㎡)
倍率方式路線価が定められていないエリアの土地を評価するときに用いる計算方法固定資産税評価額×持分×倍率

路線価と倍率は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」から調べることが可能です。固定資産税評価額は、市区町村から送付される固定資産税の納税通知書に記載されています。

ただし、実際に相続税を計算するときは、土地の形状や分類に応じて補正値をかけ合わせたり特例を適用したりしなければいけません。複雑な計算が必要になるケースも多いので、税理士に相談しながら手続きを進めることがおすすめです。

評価方法の詳細は、こちらからご覧ください。

内部リンク:土地・不動産の相続税の計算方法|種類や評価方法ごとに解説

居住用や事業用にしていた場合

被相続人が住んでいた自宅や事業用地として使用していた土地には、「小規模宅地等の特例」を利用できる可能性があります。この特例を適用すると、土地の評価額を最大80%減額することが可能です。

ただし、適用するには「被相続人と同居していた」「事業を継続する」などの要件を満たす必要があります。適用を希望する場合は、土地の使用状況や相続人の要件をよく確認しておきましょう。

小規模宅地等の特例については、こちらで詳しくご覧ください。

内部リンク:小規模宅地等の特例の計算

賃貸住宅が建っている土地の場合

賃貸住宅の敷地として使用している土地は、「貸家建付地」として評価されます。貸家建付地は、借地権の割合に応じて評価額が減額されるため、更地よりも評価額が低くなる傾向にあります。

具体的な計算式は、次のとおりです。

貸家建付地の評価額=自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
※出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価

このように、まずは自用地(更地)としての評価額を計算したあとに、借地権割合と借家権割合、賃貸割合を差し引いて貸家建付地の評価額を算出する点が特徴的です。

貸家建付地の詳細はこちらの記事で解説しているので、あわせてご覧ください。

内部リンク:貸家建付地とは?要件や相続税評価額の計算方法をわかりやすく解説

土地を相続するときの注意点

土地を相続するときは、以下のように多くの注意点を押さえておかなければいけません。

  • 現金一括納付が難しい場合がある
  • 登録免許税がかかる
  • 境界確定測量が必要になる場合がある
  • 遺産分割が難しい場合がある
  • 共有名義はトラブルのリスクが高い

各項目の詳細をみていきましょう。

現金一括納付が難しい場合がある

相続税は、現金一括納付が原則です。土地は換金性が低いので、高額な土地を相続したことにより納税資金が不足してしまうケースは珍しくありません。

現金一括納付が難しい場合は、以下のような対処法を検討しましょう。

  • 延納制度を利用する
  • 金融機関から借り入れる
  • 土地の一部を売却して現金化する

上記のように、金融機関からの借り入れや延納で対応できるケースもありますが、選択肢は限られます。納付が難しくなりそうな場合は、生前贈与や生命保険などを活用して納税資金を用意しておきましょう。

登録免許税がかかる

相続した土地は、法務局で相続登記をして名義を変更する必要があります。この際、登録免許税として不動産の価額の0.4%が必要です。

例えば、相続した土地の評価額が3,000万円の場合は、「3,000万円×0.4%=12万円」の登録免許税がかかります。ただし、土地によっては登録免許税が免除されることもあります。詳細については、税務署の資料をご覧ください。

相続登記は2024年から義務化され、正当な理由がなく登記を怠ると過料が科される可能性があります。相続開始を知った日、もしくは遺産分割が成立した日から3年以内に登記申請を行う必要があるので、忘れずに手続きをしておきましょう。

※出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」、東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~

境界確定測量が必要になる場合がある

土地を相続したあとに分筆や売却を考えている場合は、境界確定測量が必要になることがあります。境界確定測量とは、隣地との境界を正確に確定するための調査です。

境界確定測量が必要になるのは、次のようなケースです。

  • 土地を分割して複数の相続人で相続する場合
  • 土地の一部を売却する場合
  • 相続税を物納する場合

費用は土地の状況によって異なりますが、一般的に35~60万円程度かかります。測量時は隣地所有者の立ち会いと承諾が必要になるので、境界確定には時間がかかる可能性もあります。

土地を相続するときは、このような追加費用も考慮に入れたうえで準備を進めることが大切です。トラブル防止のためにも、可能であれば被相続人の生前に境界確定を済ませておくことをおすすめします。

遺産分割が難しい場合がある

遺産に土地が含まれていると、法定相続分どおりに相続することが難しい場合があります。

例えば、2,000万円の土地を3人で相続する場合、物理的に3等分することは簡単ではありません。なぜなら、土地を分割することで各区画の面積が小さくなりすぎたり、区画によって価値が大きく変わったりする可能性があるためです。

このような場合は、次のような対応が考えられます。

  • 土地を共有名義にする
  • 土地を売却して現金で分ける(換価分割)
  • 土地を取得する人が、他の相続人に現金で支払う(代償分割)

ただし、どの方法にもメリット・デメリットはあります。相続税の納付方法も含めて、相続人同士でよく話し合って決めましょう。

相続財産に土地が含まれる場合は、被相続人の生前に遺言を作成してもらうとトラブルを防ぎやすくなります。

共有名義はトラブルのリスクが高い

土地を共有名義にすると、利用方法や売却を判断するときなど、すべての意思決定に共有者全員の同意が必要になります。例えば、相続人の1人が土地を賃貸用に活用したいと考えても、他の共有者が反対すれば実現できないのです。

また、固定資産税の支払いや管理費用の負担、修繕の必要性など、さまざまな場面で意見が分かれやすくなる点に注意しましょう。共有者間で意見が対立すると、土地の有効活用ができなくなったり、売却のタイミングを逃したりする可能性があります。

共有名義にする場合は、管理や費用負担のルールをあらかじめ決めておくことが重要です。

土地を相続するときに活用できる制度

土地を相続するときに活用できる制度として、以下のようにさまざまなものが挙げられます。

  • 配偶者の税額軽減
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 贈与税額控除

ここでは、各制度の概要を説明します。

より詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。

内部リンク:相続税に非課税枠はある?節税できる控除・特例を紹介

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減は、配偶者の相続税を減免できる制度です。配偶者が遺産を相続する場合は、「1億6,000万円」または「法定相続分相当額のいずれか大きい金額」まで相続税が非課税となります。

土地の評価額が高額な場合は、配偶者がある程度の割合で取得することで、世帯全体の相続税を抑えられる可能性があります。

ただし、配偶者に財産を集中させすぎると、配偶者が亡くなった際の二次相続で、子どもの税負担が大きくなる点に注意しましょう。相続対策の際は、一次相続と二次相続の両方を見据えた計画を立てることが大切です。

内部リンク:相続税における配偶者の税額軽減の計算方法を詳しく解説します

未成年者控除

未成年者が土地を相続する場合は、「未成年者控除」を利用できます。未成年者控除は、両親が早くに亡くなってしまった場合など、未成年者の生活基盤を確保するための制度です。

控除される金額は、次のように相続時の年齢によって異なります。

未成年者控除額=(18歳-相続時の年齢)×10万円
※出典:国税庁「No.4164 未成年者の税額控除

例えば、15歳の子どもが土地を相続するときは、「(20歳-15歳)× 10万円=50万円」が相続税額から直接控除できます。

この制度は基礎控除とは別枠で適用されるため、未成年の相続人がいる場合は必ず活用しましょう。また、未成年控除額が相続税額よりも大きいときは、控除しきれなかった金額を扶養義務者の相続税から差し引くことも可能です。

障害者控除

障害者が土地を相続する場合は、「障害者控除」を適用できます。こちらも、親族を亡くした障害者の生活基盤を守るために設けられた制度です。

障害者控除の金額は、次の計算によって決まります。

一般障害者:(85歳-相続時の年齢)×10万円
特別障害者:(85歳-相続時の年齢)×20万円
※出典:国税庁「No.4167 障害者の税額控除

例えば、特別障害者が土地を相続した場合、相続税から「(85歳-50歳)×20万円=700万円」の控除が可能です。控除額が大きいので、障害者手帳や療育手帳をお持ちの方は、必ずこの制度を適用しましょう。

また、障害者控除が相続税額を上回るときは、その超過分を扶養義務者の相続税から控除できます。

内部リンク:相続税における障害者控除の適用条件とは?計算方法や注意点を解説

相次相続控除

相次相続控除は、10年以内に2回以上の相続が発生したときに適用できる控除制度です。短期間に相続が相次ぐことで、相続税の負担が重くなることを防ぐために設けられています。

具体的な控除額を算出する計算式は、次のとおりです。

相次相続控除=A×C/(B-A)×D/C×(10-E)/10
※C/(B-A)の割合が100/100を超えるときは100/100とする

A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額
B:今回の被相続人が前の相続の際に取得した純資産価額-債務および葬式費用の金額
C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
D:今回のその相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満の期間は切捨て)
※出典:国税庁「No.4168 相次相続控除

例えば、父親から土地を相続した母親が亡くなり、その土地を子どもが相続するケースに適用が可能です。

相次相続控除は、一次相続と二次相続の間隔が短いほど金額が大きくなります。対象となる場合は、必ず適用を受けましょう。

内部リンク:二次相続で相続税額が高くなる理由は?一次相続との違いも解説

贈与税額控除

被相続人から相続前3年以内に贈与を受けた財産がある場合、その贈与財産に対して支払った贈与税を相続税から控除可能です。これを「贈与税額控除」といいます。

贈与から3年以内の相続については、贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算します。そのため、すでに納付した贈与税が二重課税にならないように、この制度が設けられているのです。

例えば、2年前に土地の贈与を受けて100万円の贈与税を納付し、その後に相続が発生した場合は、相続税額から100万円を控除できます。

土地の相続税は税理士に相談することがおすすめ!

土地を相続するときは、課税遺産総額に応じた税率を適用して相続税を計算する必要があります。課税遺産総額の把握や土地の評価額算出には時間も手間もかかるので、早めに準備を始めることがおすすめです。

土地は評価額が高額になりやすく、相続税の負担も大きくなる傾向にあります。税理士に相談しながら、小規模宅地等の特例や各種控除の活用、納税資金の確保など、状況に合った対策を立てることが大切です。

相続税申告相談プラザひろしま」では、相続と向き合い30年以上の専門家が、土地の相続に関するご相談を承っております。相続税でお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。