貸家建付地とは?要件や相続税評価額の計算方法をわかりやすく解説

貸家建付地とは、所有地に賃貸用の建物を建てて、第三者に貸し出している土地を指します。言い換えると、賃貸アパートや賃貸マンション、貸家などの賃貸物件が建っている土地のことです。

貸家建付地は、そうでない土地と比べると相続税を抑えられるので、相続対策の一環として活用されるケースがあります。

本記事では、貸家建付地の要件や相続税評価額の計算方法をわかりやすく説明します。土地を相続する際の税金に不安をお持ちの方は、ぜひ相続税対策のヒントとしてお役立てください。

貸家建付地の要件

国税庁によると、貸家建付地(かしやたてつけち)は「貸家の敷地の用に供されている宅地※」であると定義されています

例えば、宅地を所有している人がそこにアパートやビルを建設して第三者に貸し付けている場合、その宅地は「貸家建付地」に該当するのです。貸家建付地は、国税庁が定める税目上、相続税・贈与税の対象となります。

貸家建付地と混同しやすい関連用語として、「貸宅地」と「自用地」が挙げられます。ここでは、各用語の意味や貸家建付地との違いをみていきましょう。

※引用:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価

貸宅地との違い

貸宅地とは、「借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている宅地※」を指します。借地権とは、建物を建てるために土地を借りる権利のことです。

例えば、Aさんの土地をBさんが借りて、その上にBさんが戸建てやアパートを建てる場合、この土地は貸宅地に該当します。ただし、BさんがAさんに地代を支払わなかったり無償で土地を利用させてもらっていたりする場合は、貸宅地ではなく自用地に分類されます。

貸家建付地と貸宅地の違いは、建物の所有者です。貸家建付地は、土地も建物も同一人物が所有していますが、貸宅地は「土地の借主が建物の持ち主」になります。少しややこしいですが、区別しておきましょう。

※引用:国税庁「No.4613 貸宅地の評価

自用地との違い

自用地とは、土地の所有者以外が利用する権利を持たない土地を指します。つまり、賃貸用の物件が建っていたり借地権が設定されていたりせずに、土地の所有者が自由に使用できる状態の土地のことです。

人に貸している土地であっても、地代を得ずに家族などに使わせているような場合は、自用地であると判断されます。

自用地は、土地の相続税評価の基準となる区分です。土地を相続する場合、まずは自用地として評価を行い、その後に各土地の種類に応じた調整を行います。

貸家建付地に関する計算

貸家建付地は、建物部分を第三者に賃貸しているという性質上、自分で自由に使用できる土地とは違って利用が制限されてしまいます。そのため貸家建付地の評価額は、そうでない土地の評価額と比較して低くなります

ここでは、貸家建付地の評価額を計算する方法についてみていきましょう。

評価額の計算方法

貸家建付地の評価額は、次の計算式で算出されます。

貸家建付地の価額=自用地としての価額-(自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
※出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価

まずは自用地としての評価額を計算したあと、借地権割合と借家権割合、賃貸割合を差し引いて貸家建付地の評価額を算出することになります。

各割合については、次項より解説します。

借地権割合の計算方法

貸家建付地の評価額を計算するときに用いる借地権割合とは、その土地で借地として利用できる割合のことを指します。例えば、借地権割合が80%の場合は「その土地の80%分の面積を借地として利用できる」ということです。

借地権割合は土地ごとに定められており、「路線価図・評価倍率表」で住所を調べたときに表示されるアルファベットによって次のように判断できます。

アルファベット表記借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%
※出典:国税庁「路線価図・評価倍率表

一般的に、地価が高くなるほど借地権割合も高くなる傾向にあります。

借家権割合の計算方法

借家権は、お金を支払って建物を借りるときに発生する借主側の権利です。

借家権割合とは、賃貸物件を評価するときに用いる一定の割合です。借家権割合は、どのような土地・物件でも全国一律で30%と設定されています。

例えば、建物の価値が1,000万円であった場合、借地権の価値は「1,000万円×30%=300万円」ということになります。

賃貸割合の計算方法

賃貸割合とは、家屋の床面積の合計に対して、実際に賃貸されている部分の床面積の合計が占める割合のことです。

賃貸割合の計算方法は、次のとおりです。

賃貸割合(%)=賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷各独立部分の床面積の合計
※出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価

例えば、賃貸マンションにおいて10部屋のうち7部屋賃貸されている場合、賃貸割合は70%ということになります。空室が少ないほど賃貸割合が高くなり、貸家建付地の価額から控除できる金額が大きくなる点がポイントです。

空室部分は賃貸割合に含まず、自用地として評価します。ただし、一時的に空室になっている場合は、賃貸しているとみなして計算できる場合もあります。

貸宅地・自用地の評価額の計算方法

貸家建付地と関連が深い「貸宅地」「自用地」の評価額を計算する方法も、ここであわせて押さえておきましょう。

貸宅地の場合

貸宅地の相続税評価額の計算方法は、次のとおりです。

貸宅地の価額=自用地としての価額-(自用地としての価額×借地権割合)
※出典:国税庁「No.4613 貸宅地の評価

貸宅地の評価額は、自用地としての評価額を算出したあと、借地権割合分の評価額を差し引きます。先述したとおり、借地権割合は国税庁の「路線価図・評価倍率表」より確認が可能です。

自用地の場合

自用地の相続税評価額の計算方法は、次のとおりです。

路線価方式:路線価×面積×補正率倍率方式:固定資産税評価額×倍率

自用地としての価額は、公的な評価額である相続税路線価を基準とした「路線価方式」を採用することが一般的です。土地の面積に路線価、補正率(特殊な形状の土地の場合)をかけ合わせることで、評価額を算出できます。

なお、路線価がついていない土地については、固定資産税評価額に倍率をかけ合わせる「倍率方式」で算出します。路線価および倍率は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」より確認が可能です。

※参考:国税庁「路線価図・評価倍率表」「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31 年1月分以降用)

貸家建付地が相続税対策になる理由

貸家建付地が相続税対策に効果的な理由として、次の2つが挙げられます。

  • 現金よりも相続税を抑えられるから
  • 相続税評価額を抑えられるから

「現金を相続する場合」と「不動産を相続する場合」を比べると、不動産を相続する場合のほうが相続税を抑えられることが一般的です。なぜなら、相続時の土地評価額は時価より低くなることが多いためです。

また、貸家建付地の評価額を計算するときは、借地権割合や借家権割合、賃貸割合を控除できます。そのため、「自用地」や「貸宅地」に比べると相続税評価額を抑えられるのです。

このような理由で課税対象となる評価額が下がれば、相続税の金額も下がります。相続税を減らす方法をお探し場合は、貸家建付地として土地活用することもひとつの選択肢でしょう。

貸家建付地として判断されるか難しいケース

たとえ他人に貸し付けている土地であっても、貸家建付地に該当するかどうかの判断が難しい場合があります。それが、以下の2つのケースです。

  • 賃貸併用住宅
  • コインパーキングなどの駐車場

どのようなことなのか、詳細をみていきましょう。

賃貸併用住宅

賃貸併用住宅は、所有者が居住する部分と賃貸物件が併設されている物件を指します。わかりやすい例として、戸建て住宅の1階部分に貸店舗をプラスしている物件が挙げられます。

賃貸併用住宅の場合は、賃貸部分のみ貸家建付地として評価されることが一般的です。それ以外の部分は、自用地として評価されます。

コインパーキングなどの駐車場

土地をコインパーキングなどの駐車場として貸し出している場合は、貸家建付地として認められません。

なぜなら、貸家建付地として認められるには「貸家の敷地の用に供されている宅地」という要件を満たしている必要があるためです。屋根や生活に必要な設備がない駐車場は「貸家」に該当しないため、貸家建付地の要件を満たさないのです。

ただし、賃貸アパートや賃貸マンションに併設された入居者専用駐車場は、建物と一体の設備とみなされ、貸家建付地として評価されることがあります。

貸家建付地を活用した相続対策は専門家に相談を

所有している土地に賃貸用の建物を建てて第三者に貸し出している場合、その土地は「貸家建付地」と呼ばれます。貸家建付地は、相続税評価額の際に借地権割合や借家権割合、賃貸割合を控除できるため、相続税対策の方法として有効です。

相続税対策をご希望の場合や貸家建付地の相続税を計算する場合は、専門的な知識が必要になります。少しでも相続税の負担を抑えたい場合は、専門家に相談すると安心でしょう。

相続税申告相談プラザひろしま」では、相続と向き合い30年以上の専門家が相続手続きのサポートを実施しています。貸家建付地でわからないことやお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。