相続税はどうやって払うの?4つの納付方法と気をつけたいポイントを紹介

「現金一括納付が原則」といわれる相続税ですが、実は複数の納付方法が用意されています。相続人のなかには、「どうやって払うとお得なの?」「どの方法が手軽?」と、相続税の支払い方法に迷っている方は多いかもしれません。

この記事では、相続税の具体的な納付方法やそれぞれのメリット・デメリット、手続きの流れについて解説します。自分に合った支払い方法を知るために、ぜひ参考にしてみてください。

相続税はどうやって払うの?4つの納付方法

相続税は、以下の4つの方法で支払うことが可能です。

  • 税務署の窓口
  • 金融機関
  • コンビニエンスストア
  • クレジットカード

ここでは、各納付方法の詳細を説明します。

税務署の窓口

税務署の窓口では、現金による納付が可能です。窓口での納付は、確実に手続きを完了したことを確認できる点が最大のメリットです。また、その場で納付書の控えを受け取れるので、すぐに納付の証明として活用できます。

ただし、税務署の窓口で納付する場合は、平日の開庁時間内(8:30〜17:00)に来署する必要があります。また、多額の現金を持ち歩くリスクもあるため、納付金額が高額な場合は他の方法を検討したほうが良いでしょう。

金融機関

相続税は、金融機関で納付することもできます。銀行だけではなく信用金庫、農協などで支払うことも可能です。最も一般的な納付方法であり、納税額が高額な場合も安全に手続きできる点がメリットです。

納付の際は、必ず納付書を持参しましょう。納付書は申告書の提出時に税務署から受け取りますが、紛失した場合は税務署で再発行することが可能です。

金融機関の窓口で他の相続人の相続税を支払う場合は、委任状が必要になることがあります。また、納付書の名義人と異なる人が納付する場合は、贈与税の対象となる可能性がある点にも注意しましょう。

コンビニエンスストア

相続税は、コンビニエンスストアで相続税を支払うこともできます。24時間いつでも気軽に納付できるというメリットがありますが、次のようなデメリットもあります。

  • 納付可能額は30万円まで
  • 国税庁のホームページでバーコード付きの納付書を発行する必要がある
  • キャッシュレス決済は利用できない
  • 納付から税務署への収納情報の反映に数日かかる

相続税の場合、納付額が30万円を超える方が多いため、コンビニ納付が可能なケースは非常に限定的です。

クレジットカード

国税庁が提供する「国税クレジットカードお支払サイト」を利用することで、クレジットカードで相続税を納付することも可能です。1回あたりの納付限度額は1,000万円未満で、決済手数料が別途必要になります。

クレジットカード払いの注意点として、以下の4点が挙げられます。

  • 納付日は決済が確定した日となる
  • 一度手続きを開始すると取り消しができない
  • 領収証書が発行されない
  • 事前に利用限度額の確認が必要

クレジットカード納付は、ポイント還元などのメリットがありますが、手数料負担や利用限度額などのデメリットもあります。相続税額が高額な場合は手数料負担も大きくなるので、他の納付方法がおすすめです。

相続税を払うための手続き方法

相続税を払うときは、以下のステップに沿って手続きを進めていきましょう。

  1. 相続人を確定する
  2. 遺産総額を把握する
  3. 遺産分割協議を行う
  4. 相続税を計算する
  5. 相続税の申告・納付を行う

ここでは、相続税を支払うまでの流れをみていきましょう。

相続人を確定する

まずは、相続人を確定させましょう。相続人の構成や人数によって、法定相続分や基礎控除額が大きく変動するためです

このときに確認しておきたい情報は、以下のとおりです。

  • 法定相続人(戸籍謄本)
  • 相続放棄の有無(家庭裁判所への照会)
  • 遺言書の有無
  • 代襲相続の可能性

特に注意したいのは、相続放棄をした人も基礎控除の計算上、法定相続人に含まれる点です。また、養子がいる場合は、実子の有無によって法定相続人としてカウントできる人数が変わってきます。

家族構成が複雑で判断が難しい場合は、相続に詳しい税理士への相談がおすすめです。

遺産総額を把握する

相続税は遺産総額に応じて課されるので、故人が保有していた財産を正しく把握することが重要です。

相続税の対象となる遺産には、以下のようなものが含まれます。

  • 預貯金・有価証券などの金融資産
  • 不動産
  • 事業用資産
  • 家財道具(貴金属等の高額なものに限る)
  • みなし相続財産(生命保険金や死亡退職金など)

また、以下のような費用がある場合は、遺産総額から差し引くことが可能です。

  • 債務(住宅ローンなど)
  • 葬式費用
  • 未払いの公租公課

場合によっては、被相続人名義の財産を把握するために、税務署へ「相続税の申告のための預貯金等の照会書」の提出や、金融機関への残高証明書の請求が必要になることがあります

遺産分割協議を行う

遺産分割協議は、各相続人が相続する財産や相続税納付額を決定する大切な話し合いです。相続人が複数人かつ遺言がない場合は、必ず行いましょう。

特に重要なのが、「納税資金の確保方法」についての話し合いです。相続税は、原則として現金での一括納付が求められます。そのため、状況に応じて換金する財産の選定や、延納・物納の検討なども協議の段階で決めておかなければいけません。

また、遺産分割協議書は相続税申告のときに提出する必要があります。各相続人が署名・押印を忘れずに行い、内容に相違や不備がないように十分注意しましょう。

「配偶者の税額軽減」などの相続税申告が適用要件となっている特例を適用する場合は、必ず期限までに協議を完了させて書類を揃えておくことが大切です。

相続税を計算する

「誰が何を相続するのか」が決まったら、相続税を計算していきましょう。

相続税を算出する具体的なステップは、次のとおりです。

  1. 「プラスの財産-マイナスの財産」で相続財産の評価額を確定する
  2. 基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を計算する
  3. 相続財産の合計額から基礎控除額を差し引く
  4. 法定相続分に応じて仮の相続税を計算する
  5. 仮の相続税から合計相続税額を算出する
  6. 実際の相続分に応じて相続税を按分する
  7. 適用可能な控除を反映する

上記のように、相続税の計算には複数の工程があり、専門的な知識が不可欠です。計算を間違えると、修正申告が必要になったり追徴課税のリスクが生じたりするため、慎重な対応が求められます。

相続税の申告・納付を行う

相続税の申告・納付は、「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」に完了させなければいけません。相続財産によってさまざまな添付書類が必要となるので、早いうちから準備を進めることが大切です。

税務署で申告書と添付書類を提出すると、納付書が発行されます。この納付書を使用して、期限内に任意の方法で納付を完了させましょう。

提出した申告書や納付の証明書類は、税務調査に備えて7年間保管しましょう。申告・納付の遅延は加算税や延滞税の対象となるため、期限には十分に注意してください。

相続税の支払いで気をつけたいポイント

相続税を支払うときに気をつけたいポイントとして、以下の3点が挙げられます。

  • 原則現金で一括納付する必要がある
  • 必ず期限を守る
  • 立替は贈与税の対象になる

どのようなことなのか、詳細をみていきましょう。

原則現金で一括納付する必要がある

相続税は、原則として各相続人が自分の財産から現金で一括納付することが求められます。相続した預貯金などから納税することも可能ですが、その場合は遺産分割協議が完了しており、名義変更手続きも済んでいることが条件となります。

また、遺産を共同相続した場合でも、納税は個人単位で行わなければなりません。相続財産の預貯金からまとめて納付する場合は、相続人全員の合意が必要です。

特に、不動産などの換金性の低い財産を相続するときは、納税資金の確保が難しくなる可能性があります。期限内に納付するためにも、早めに対策を行いましょう。

必ず期限を守る

相続税の申告・納付期限は、「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」と法律で定められています。

この期限を過ぎると、以下のような追加の税金(加算税)が課されるリスクがあります。

税金の種類概要税率
無申告加算税期限内に申告しなかった場合に課される・自主申告:5%
・税務署の指摘で申告した場合:15%
※50万円超の部分は20%
延滞税※納付が遅れた場合に課される・相続税の納付期限から2か月以内:7.3%
・相続税の納付期限から2か月超:14.6%
※原則7.3%もしくは14.6%の税率だが、原則の税率と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合が適用
※※出典:財務省「加算税の概要」、国税庁「No.9205 延滞税について

また、期限を過ぎると、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった、節税効果の高い特例が適用できなくなる可能性があります。やむを得ない事情で期限までの納付が難しい場合は、必ず事前に税務署へ相談し、延納許可を申請するなどの対応を取りましょう

相続税のペナルティについては、こちらの記事で詳しくご覧ください。

【関連記事】相続税の時効は何年?さかのぼる年数や理由、ペナルティを解説

立替は贈与税の対象になる

相続税の立替納付は贈与税の対象になるため、可能であれば避けましょう。例えば、親が子どもの相続税を立て替えて納付した場合、その金額は贈与とみなされ、別途贈与税が課税される可能性があります。

子どもが納税資金を用意できないときは、「現金や換金性の高い資産を多めに取得させる」などの工夫をしましょう。どうしても立替納付が必要な場合は、贈与税の非課税枠を活用するなど、税理士と相談しながら慎重に対策を進めることをおすすめします。

資金不足で相続税を払えない場合の対処法

相続税は原則として期限内に現金で一括納付する必要がありますが、納税資金が不足する場合は「延納制度」や「物納制度」を利用できます。

ここでは、それぞれの制度について説明します。

延納する

延納は、一定の要件のもと、相続税を分割して納付できる制度です。

納税額が10万円を超え、かつ金銭で納付することが困難な事情がある場合は選択肢に入れましょう。延納期間は、相続財産の種類や納付税額によって5年から20年の範囲で設定されます。

ただし、延納には担保の提供が必要で、延納税額に応じた利子税もかかります。また、延納許可申請を申告期限までに行なわなければいけないので、納税資金の調達が難しいと判断した場合は、早めに税務署へ相談することが重要です。

利子税の負担と担保提供の手間を考慮すると、金融機関からの借入れのほうが良いケースもあります。

相続税の延納については、こちらの記事で詳しくご覧ください。

【関連記事】相続税は延納・分納できる?可能になる条件やデメリットを解説

物納する

物納制度は、延納によっても金銭納付が困難な場合に、相続財産そのもので納税する制度です。

以下の順位で物納が認められる点に注意しましょう。

順位内容
第1順位不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第2順位非上場株式等非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第3順位動産
※引用:国税庁「No.4214 相続税の物納

物納の申請には、相続税の申告期限までに「物納許可申請書」と関係書類を提出しなければいけません。

ただし、すべての財産が物納できるわけではなく、物納適格財産の要件を満たす必要があります。例えば、抵当権が設定されている不動産や、管理処分が著しく困難な財産は物納が認められません。

相続税の物納については、こちらの記事で詳しくご覧ください。

【関連記事】相続税の物納とは?対象財産や手続方法、物納に適している人を解説

相続税をどうやって払うか迷ったら税理士にご相談ください!

相続税の納付方法は一見シンプルに思えますが、実際に手続きを進める際はさまざまな注意点を押さえておかなければいけません。各納付方法には異なったメリット・デメリットがあるため、自分に合った支払い方を見極める必要があります。

また、相続税の計算や各種特例の適用、納税資金の確保などには専門家によるサポートが不可欠です。

相続税申告相談プラザひろしま」では、相続と向き合い30年以上の専門家が、相続税の納付に関するご相談を承っております。納付方法に迷っている方や相続税手続きでお困りのことがある方は、お気軽にお問い合わせください。