【FMちゅーピー】相続税の税務調査における調査官の質問とウラの目的

年間300件以上の相続税の相談を受ける相続税の虎こと税理士の棚田秀利です。
2020年9月3日、FMちゅーピーで「相続税税務調査における税務調査官の質問とウラの目的」について話しました。

 

前回に続いて、税務調査のお話です。

皆さん、税務調査があると、最初はどんな凄腕の刑事のような調査官が来て、鋭い質問のマシンガンで吊し上げになるようにビビッてしまいます。

でも税務調査には、普通のスーツを着たオジサンが来られて(大抵10時です)、12時までマニュアル通りの質問を受けますが、

意外とソフトな内容だし、前日まで怖がっていた税務署員のことも自分の趣味にも興味を持ってもらい

「意外といいヤツだな」と心を開いてきます。

しかし、税務調査に来た税務署員は税金を家まで取りにきたオヤジであり、

自分の趣味に理解のあるただのヒマなオジサンではありません。

高価な絵画や骨とう品も自分で楽しむのはいいですが、

それを税務署員に見せて解説するのはやめた方がいいです。

申告漏れとして追徴課税になるだけです。

つまり、質問には一見自分たちには見えにくい彼らの意図があるので、
その意図に応じた回答をしないとケガすることになります。

 

具体的に「気をつけなければいけない質問」を何個かピックアップしてみました。

①被相続人の経歴(住所の変遷など)を教えてください。

被相続人の住所の変遷は重要な情報です。転勤等でよその土地に住んでいたら、その地元の地方銀行の口座を作っていることもあり、その口座を税務署が捕捉するのに住所の変遷が役立ちます。特によその地域の中小証券会社の口座とかはなかなかわかりません。

 

➁被相続人の職歴について教えてください。

職歴といってもどのような職業をしていたかは大して重要な情報ではありませんが、その勤務していた会社を退職した際に多額の退職金が支給されていることがあり、どのような形で運用されたかを調査してきます。

 

➂被相続人の趣味は何ですか?

ゴルフをしていたらゴルフ会員権を所有していたのではないかとか、骨とう品集めであれば財産価値のある骨とう品が相続財産の中にちゃんと計算されているかを確認されます。

絵画・壺というものは一般人にはなかなか価値がわからないものです。骨とう品趣味だということで褒められて、調子に乗って被相続人のコレクションの一つ一つを説明しだすのは自殺行為なので、やめておきましょう。

そもそも、税務署員とは盛り上がる必要もないし、必要最低限の会話にとどめましょう。

 

④被相続人が死亡時どういう状況だったのか?

被相続人の意思能力(認知症?)を確認しており、生前贈与してある際には、被相続人の意思能力がちゃんとあり贈与が有効であったかがチェックされます。

 

➄相続人の職歴について教えてください

失礼な話ではあるものの、相続人が年収300万円なのに今の預金残高が5000万円もあれば、過去に生前贈与があったのか、それはちゃんと申告されているかどうかの前提情報となります。

 

⑥預金は誰が管理していましたか?

もちろん「名義預金」をチェックしていますし、

相続人が管理していたら、当然相続人の口座に流れていないかもチェックされます。

 

➆生活費は誰が出していましたか?

被相続人の預金通帳の出金状況と照らし合わされます。

 

⑧この家は金庫とかないですか?

お昼前にこの質問があり、金庫があると回答すれば、お昼休憩終了後の午後一番にその金庫の中身を見せてくださいという話になります。

家の中の金庫というものは、もちろん相続税の税務調査の前に確認しておかないといけません。

何に注意すべきかというと、決して相続人の通帳とかキャッシュカードとか印鑑(銀行員・認印ともに)が入っていないかどうかを確認してください。

前日には確認されているとは思いますが、お昼休憩中にも再確認しておく必要があるかもしれませんね。

 

税務調査に私が立ち会う際には、クライアントが余計なことを話さないように税務署員との会話は全てコントロールしているつもりですが、長い税務調査の中では、私もトイレに行くときもあるし、携帯電話がかかってきてその対応に席を外すことがあります。

そんな時、一時的ですがクライアントは税務署員とマンツーマンとなる時があります。そんな時に気まずいと思って、いろいろ話さない方がよいです。そこからボロが出てきますので。

過去に終盤までうまく行っていたのですが、ちょっとしたポロッと出てきたセリフがもとで追徴課税の処分となった例がありますので、ご注意ください。

 

結論です。

税務署員とは税務調査だから話をしている間柄で、税務調査が終了すればアカの他人です。

仲良くなっても何もいいことがないので、必要最低限の対応にとどめましょう。

 

当事務所に相続税の申告を依頼されれば、当事務所もなるべく税務調査に合わない申告書を作成しますが、

万が一税務調査に遭っても税務調査対応の経験豊富な棚田秀利税理士事務所に任せておけば大丈夫です。