【FMちゅーピー】相続税を申告するときの葬式費用の取り扱い

年間300件以上の相続税の相談を受ける相続税の虎こと税理士の棚田秀利です。
2020年6月18日、FMちゅーピーで、相続税を申告するときの葬式費用の取り扱いについて話しました。

相続税の計算上、相続財産から控除できる葬式費用は国税庁のタックスアンサーで次のものとされております。

(1) 葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)

(2) 遺体や遺骨の回送にかかった費用

(3) 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)

(4) 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用

(5) 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm

 

領収書をもらえないお寺の費用

ここで問題になるのが(4)のお寺の費用です。

お寺さんへの読経料・お布施等について領収書はほとんどもらえません。これは宗教法人が受け取るお布施は非課税のためです。

こうした場合、自分のメモで大丈夫です。

メモの中身は日時・お寺の名前・金額で十分です。

 

互助会の積立金で葬式費用を支払った場合の、相続税法上の葬式費用はどう計算する?

さてよく迷うのが、互助会の積立金で葬儀費用を払った場合の相続税の葬式費用はどう計算するのでしょうか?

具体的に説明しますと、例えば葬儀会社から葬式費用として100万円請求されましたが、互助会の積立金が60万円貯まっていたので、それをまず葬式費用に充て、残額40万円を精算したといったケースもよくあると思います。

この場合、相続税の計算上相続財産から控除できる葬式費用は、

葬儀会社が葬式費用として請求している金額100万円

実際に現金支払した金額40万円

のどちらでしょうか?

 

このケースでは互助会の契約者が誰かによります。

互助会の契約者が被相続人以外の場合は、積立金も被相続人以外の財産であるので葬儀会社から請求されている100万円が相続税の葬式費用となります。

これに対して互助会の契約者が被相続人の場合は、互助会の積立金も被相続人の相続財産と考えられますので、積立金との相殺後現金で支払った40万円が相続税の葬式費用となります。

また、相続人が被相続人の口座からあらかじめ葬儀費用として出金していて、それで葬式費用を賄っているケースも多く見ます。

この場合相続税の申告書上、葬式費用を控除するだけでなく、相続財産にあらかじめ出金しておいた現金を含めることを忘れないようにしましょう。

 

また、前出のタックスアンサーでは葬式費用に含まないものとして以下のものが挙げられています。
1)香典返しのためにかかった費用
2)墓石や墓地の買入のためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
3)初七日や法事などのためにかかった費用

 

香典返しの取り扱いについて

1)の香典返しとは四十九日の法要を終えてから、お香典として包んで頂いた額に応じたお返しを、お香典をいただいたお礼や無事に四十九日の法要が済んだことを書いたお礼状とともに送る品のことです。
香典をもらっても相続財産にも入れないし、所得税的にも贈与税的にも非課税の扱いのため、その返礼にあたる香典返しは葬式費用として相続財産を控除できません。

ただし、香典返しとは別に会葬御礼というものがあり、通夜・本葬に出席された方々に、会葬礼状とともにお渡しする返礼の品を配った際には、この会葬御礼を葬式費用とすることができます。これに対して、香典返しはせず、会葬御礼のみを行った際にはこれを香典返しとみなされ、葬式費用として控除できません。

つまり、相続税の節税的には、香典返しと会葬御礼をきちんと区別して行った方が相続税の節税になるということは言えると思います。

 

墓地・墓石の購入費用の取り扱いについて

2)の墓地・墓石の購入費用は葬式費用としては控除できません。しかも被相続人の生存中に墓石を購入して、その費用が未払いである場合には、債務として控除できません。

 

初七日法要の費用について

3)の初七日法要以降四十九日などの法要にかかる費用は、葬式費用として控除することができません。
しかし、最近葬儀の簡素化の流れもあり、初七日法要を告別式の「当日に繰り上げ行われる葬儀もよく見かけられるようになりました。
繰り上げ初七日法要を行った場合、葬儀会社からの請求書上では、通夜・告別式の費用と初七日法要の費用との区別ができないことが多く、この場合は初七日法要の費用を葬式費用に含めて相続財産を控除してもよいとされています。

 

位牌の処理方法について

また位牌ですが、白木位牌は葬式費用に該当しますが、本位牌は葬式費用に該当しません。そして本位牌に作り変える際の費用は、葬式とは関係がないため葬式費用に該当しません。本位牌に魂を入れるための読経料についても葬式費用には該当しません。