相続税専門税理士が解説する「不動産事業の法人化」のメリット・デメリット(放送91回目)

不動産事業の法人化って、どんなメリットがありますか?デメリットはありませんか?

不動産の法人化のメリット

不動産事業の法人化が今も注目を浴びています。

さて、この法人化のメリットは何でしょう?

1.年々かかる所得税の節税

①給与所得控除による所得税の削減

法人設立した際の節税メリットは決して設立前の所得税より、設立後の法人税が安いということを言っているのではありません。

なぜなら、法人をいったん設立すると、法人税を払って内部留保を蓄積するより、法人に利益が発生しないように役員報酬の金額をあわせているケースが多いです。そのため、法人税の設立メリットは、不動産所得を給与所得により受け取ることにより、給与所得控除を適用できることにより法人化した方が所得税が削減できます。

➁所得の分散による所得税の削減

所得税の税率は累進課税のために、所得の低い親族に役員報酬を支払うことにより、所得税の削減を図れます。

2.認知症対策

高齢の不動産オーナーが認知症を発症し本人の行為能力が欠けたために、いざというときに不動産の売却・賃貸契約の締結とか大規模な修繕の契約が締結できなくなることを法人化により防ぎます。

3. 共有対策

一つの不動産に対して複数の相続人がいるとき、この不動産を複数の相続人間で共有せざるをえないケースが生じます。

いったん共有相続すると、不動産の売却・賃貸等等の契約を何かしようとしても共有者全員の合意が必要です。

共有者全員の合意を取り付けることができないために、タイミングに応じた契約ができなくなる可能性も生じてきます。

法人化していれば、たいていのことはその法人の代表者により決定して契約も締結できます。

上記のように法人化には節税はもちろんのこと様々なメリットがあります。

不動産法人化の注意点

しかし、法人化には以下の注意点もあります。

1.不動産流通税(登録免許税・不動産取得税)

法人化といっても、ただ法人化するだけでなく、収益不動産を法人に移転することまで含みます。

個人が所有する不動産を法人が簿価で買い取ることにより、譲渡所得税が課税されないようにしますが、

売買金額を下げたり、登録免許税・不動産取得税をなるべく抑えるために、

不動産といっても収益不動産の基となる家屋のみを売買の対象として、底地は賃貸契約により使用することになります。

しかし、なるべく抑えたとしてもその家屋の売買に関して

家屋の固定資産税評価額の2%の登録免許税、3%の不動産取得税が課税されます。

固定資産税評価額3000万円の家屋を売買すると、登録免許税・不動産取得税合計150万円も課税されます。

2.法人化は相続税対策には?

家屋を簿価で購入した当初の法人の負債は簿価自体が残りますが、家屋は固定資産税評価額(簿価の7割程度)の7割評価となり、

土地の評価額の2割とされる借地権を加味したとしても、債務超過となることが大いに考えられます。

これは法人に家屋の名義を移して数年の間にはよく起こるケースであり、

この債務超過が発生している間は、法人化した方が余計な相続税が発生することが考えられます。

このように、法人化には多くのメリットはあるものの、ケースによっては相続税で不利になることもありますので、

不動産事業の法人化は相続税に詳しい税理士に相談することが望ましいと思われます。

相続税申告相談プラザひろしまでは、初回相談無料ですので、この機会に気軽にご相談下さい。

(FMちゅーピー2021年12月2日放送分 放送開始91回目)