本来なら子が親のカネを引き出すのは違法
私が銀行員だった30年前は子が親の代わりに預金を引き出すことは日常茶飯事でした。
特に委任状もなく、明らかに年齢の違う方が預金を窓口で引き出されていました。
しかし、現在はコンプライアンスが厳しくなり、そんなことはできなくなっています。
正式には成年後見とか家族信託の手続きをしない限り、子が親の代わりに預金の出し入れすることは不可能です。
そうは言っても今までの取引の関係で支店の判断で窓口での取引ができることもありますが、
すべての支店でそれができるわけでもなく、今できる支店においてもいつまでもできる保証はありません。
ただ現実的には、ATMには本人確認がないので、親の預金を子が代わりにATMにより出金するケースは多いです。
ATM出金は意外と簡単・・・。
本来親と言っても他人。他人の口座から出金するのはなかなか心理的にハードですが、いざATMで出金すると簡単です。
心理的にハードな状況もそのうちに慣れてくると思います。
しかし、その簡単なところに落とし穴があります。
出金するのは簡単なのですが、後でその出金行為をチェックする人間がいるのです。
その人間は、税務署と他の相続人です。
税務面から
生前の被相続人の預金の入出金を税務署は調査しますが、これは生前に被相続人から相続人に対して贈与がなかったかどうかチェックしているのです。
出金は大抵「本人の生活費だ」と説明されることが多いですが、本人が老人ホーム等の施設に入所していたら口座引き落としの施設利用料以外にどれだけの生活費がかかるのか?といった疑問が残ります。
また親の預金口座から10万円引き出された同日に長男の預金口座に10万円入金の取引があった場合、親子間で贈与があったのではないかと贈与税の問題も生じますし、相続税でも令和6年1月以降の贈与に関して相続発生7年以前の贈与は相続税の計算上相続財産に持ち戻されますので、相続税の問題が生じてきます。
法律面から
注意すべき点は税務面だけではありません。
親の生前に気軽に引き出された親の預金は、「本当に親の指示によって親のための資金を引き出したのか?」と他の相続人ともめる可能性あります。
これは親の生前において管理を任せられている子のみが預金取引を確認することができますが、相続発生後に他の相続人が被相続人の預金取引を確認することができることを忘れてはいけません。
このため、親から任せられているからと言っても、親の預金を引き出すのは税務・法律の両面からも慎重に行った方がよいと思います。
相続税申告相談プラザひろしまでは、相続発生後の相続税申告だけでなく、生前の親の財産の管理にも経験が豊富なので、初回相談無料の機会を使って、ご気軽にご相談ください。
令和6年2月1日FMちゅーピー放送開始142回目