「相続税についてのお尋ね」は、税務署から相続税が発生する可能性が高いとみなされた人に送付される書類です。この書類が届くと、「何か疑われているのかな?」「どう対処すれば良いのだろう」と不安になってしまう方もいるかもしれません。
この記事では、「相続税についてのお尋ね」がどのようなものなのかについて解説します。送付の目的や注意したいポイントを知って、スムーズな相続手続きを目指しましょう。
相続税の「お尋ね」とは?
「相続税についてのお尋ね」は、税務署から相続人に送付される書類です。相続財産を確認することを目的としたもので、実際の相続税申告書とは異なる点に注意が必要です。
まずは、「相続税についてのお尋ね」がどのような書類なのか、詳しくみていきましょう。
「相続税についてのお尋ね」を送る目的
「相続税についてのお尋ね」は、被相続人が相続した財産を確認して、相続税の申告を促すことを目的に送付されます。家族が亡くなったすべての人ではなく、相続税が発生する可能性があるとみなされた人に届く点がポイントです。
税務署は、市区町村などから得た情報をもとにして、相続が発生する人を把握しています。そして調査の結果、相続税の対象となる可能性がある相続人に対して、申告書と一緒に「お尋ね」を送るのです。
「相続税についてのお尋ね」を送る基準となる情報
そもそも、税務署はどのようにして相続人や財産を把握して、「相続税についてのお尋ね」を送る対象者を絞り込んでいるのでしょうか。
その基準となる情報源の一例として、次のようなものが挙げられます。
- 地方自治体からの死亡情報
- 被相続人の所得情報
- 被相続人が保有する不動産の情報
- 証券会社や金融機関の情報
- 財産債務調書の情報
- 前回の相続税申告書の情報
税務署は、被相続人の源泉徴収票や確定申告の情報を保有しています。さらに、証券会社から提出される「特定口座年間取引報告書」や、金融機関・地方自治体に対して故人が保有していた財産の情報を照会することが可能です。
そのため、被相続人の死亡時の財産を推測できるのです。特に、被相続人が不動産オーナーや高額納税者だった場合は、お尋ねが届く可能性が高くなります。
「相続税についてのお尋ね」が送られてくる確率
「相続税についてのお尋ね」は、税務署が相続税の対象となりそうな人を選択して送付します。ランダムに送付されるわけはないので、明確に「何人に1人に届く」ということはできません。
一方で、税務調査は大体10人に1人の確率で行われているといわれています。そのため、相続税の申告漏れや過少申告は高確率で発覚することを念頭に置いておく必要があります。
「お尋ね」や相続税申告には真摯に対応して、適切に納税を行うことが大切です。
「相続税についてのお尋ね」が送られてくる時期
送付される時期によって、「相続税についてのお尋ね」が持つ意味は大きく変わってきます。
ここでは、送付時期ごとの詳細をみていきましょう。
1. 相続発生後6~8か月経過後
一般的に、「相続税についてのお尋ね」が送られてくるのは、相続発生後6~8か月経過後です。
被相続人が亡くなると、親族は市区町村役場に死亡届を提出することになります。この情報が「相続税法 58条※」にもとづいて税務署に通知されると、税務署は被相続人の過去の所得や各機関への照会を行い、保有していた財産を調査します。この調査が終わるタイミングが、おおよそ相続発生後6~8か月経過後なのです。
税務署は、相続財産の内容を確認して「必要なら申告してくださいね」と促すためにお尋ねを送付します。したがって、お尋ねが送られてきたからといって、不正や脱税を疑われているわけではありません。また、必ず申告が必要というわけではない点にも注意が必要です。
とはいえ、お尋ねが届いた時点で申告期限が迫ってきていることは事実です。相続税を納付する必要がある方は、急いで準備を進めましょう。
相続税の申告・納付が必要かどうかの判断については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】相続税はいくらからかかる?目安の金額や計算方法を解説
また、申告が間に合わなそうなときはこちらの記事を参考にしてみてください。
【関連記事】相続税は延納・分納できる?可能になる条件やデメリットを解説
2. 相続発生から数年経過後
相続が発生してから数年経過後に「相続税についてのお尋ね」が届いた場合は、税務署に申告漏れを疑われている可能性があります。
放置すると税務調査が行われ、重加算税が課されたり、節税効果の高い特例や控除を適用できなくなったりするおそれがあります。すぐに当時の財産状況を調査して、必要であれば相続税の申告をしましょう。
お尋ねが届いたあとに正しく相続税の申告・納税を行った場合でも、本来の申告期限を過ぎていれば、無申告加算税や延滞税を課されることがあります。とはいえ、対応が早いほど税率は緩和されるので、税理士に相談しながらスピーディーに申告・納税を済ませましょう。
【関連記事】相続税の時効は何年?さかのぼる年数や理由、ペナルティを解説
「相続税についてのお尋ね」の内容と書き方
「相続税についてのお尋ね」は封書で送られ、中には以下の書類が同封されています。
- 相続税の申告要否検討表
- 相続税のあらまし
- 相続税の申告のしかた
- 相続税の申告のためのチェックシート
このうち、「相続税の申告要否検討表」は必要事項を記載して税務署に返送しなければいけません。
「相続税の申告要否検討表」に記載する内容は、次のとおりです。
・被相続人の情報 ・相続人の情報 ・遺産に関する情報(不動産・金融資産) ・保険金・死亡退職金について ・その他の遺産について ・生前贈与に関する情報 ・負債・未納税金・葬式費用について ・相続税の申告が必要かどうかの判定 |
被相続人・相続人の情報と遺産の情報を記載すれば良いので、記載にあたり難しい計算や知識は必要ありません。ただし、遺産について正しく把握しておく必要があるため、ご自身で対応するのが難しい方は税理士に相談すると良いでしょう。
詳しい記入例は、国税庁のホームページで紹介されています。あわせてご覧ください。
※参考:国税庁「相続税関連情報」
「相続税についてのお尋ね」に関する注意点
「相続税についてのお尋ね」に関する注意点として、以下の4つが挙げられます。
- 提出の義務はないが、提出したほうが良い
- 申告準備をしている場合は提出しなくても良い
- 嘘は記載しない
- お尋ねの有無だけで判断しない
どのようなことなのか、詳細をみていきましょう。
提出の義務はないが、提出したほうが良い
「相続税についてのお尋ね」は、あくまで税務署からのお願いであり、提出の義務はありません。ただし、無視すると後々疑いをかけられて、税務調査の対象になる可能性があるので注意が必要です。
「お尋ね」を無視すると、次のようなリスクが高まります。
- 税務調査の対象となる可能性が高まる
- 無申告など問題が発生したときに、特例や控除が使えなくなる可能性がある
- 無申告の場合、罰金のリスクがある
申告が不要な方であっても、文書に記載されている期限までにしっかりと回答しておきましょう。その時点では相続税がかからない状況であることを伝えておくと、後々財産が発見されたときに不正の意思がなかったことを証明できます。
申告準備をしている場合は提出しなくても良い
すでに申告準備をしていたり税理士に相談したりしている方は、「相続税についてのお尋ね」を提出する必要はありません。また、申告を行う際も添付は不要です。
そのまま手続きを進めて、期限までに申告・納付を済ませましょう。
嘘は記載しない
「相続税についてのお尋ね」に嘘を書いても罰せられることはありませんが、嘘を記載することは避けましょう。税務調査されたときに財産隠しが発覚すれば、重い加算税が課される可能性があるためです。
もし嘘を記載してしまった場合は、正しい内容で相続税申告をしましょう。最終的に申告書の内容が正しければ、嘘を記載したことを罰せられることはありません。
お尋ねの有無だけで判断しない
相続税の申告・納付義務があるかどうかは、「相続税についてのお尋ね」の有無だけで判断することはできません。「送られてこない=相続税がかからない」ということではないので、自己判断することは避けましょう。
逆に、「送られてきたけれど財産に心当たりがない」というときは、相続人が把握できていない財産が存在する可能性があります。どのような財産を見逃してしまっているのか、申告が必要なのかを判断することが難しいときは、税理士へ相談したほうが良いでしょう。
相続税のお尋ねが届いたら税理士にご相談ください
税務署から「相続税についてのお尋ね」が送られてきた方は、相続税の申告・納付が必要になる可能性があります。申告の準備ができていない方や申告を忘れていた方は、迅速に対処しましょう。
ただし、お尋ねの有無だけで納税の必要性を判断することはできません。相続税が発生するかわからない方はもちろん、書類の書き方に悩む方は、税理士に相談すると良いでしょう。
また、お尋ねが送られたことがきっかけで申告が必要だと気づいた方も、期限まで時間がないので、専門家に相談しておくと安心です。
「相続税申告相談プラザひろしま」では、相続と向き合い30年以上の専門家が相続手続きのサポートを実施しています。「相続税についてのお尋ね」でわからないことやお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。