タワーマンション購入により、相続税節税を諮る「タワマン節税」が令和4年4月19日に最高裁により敗訴になりました。
1. マンションの相続税評価とは
不動産の相続税評価は、財産評価基本通達により、
土地は、路線価
家屋は、固定資産税評価額
を基本として評価されることになっています。
マンションの場合は、
①「敷地」全体の敷地を路線価評価して、各戸に、敷地権の割合により按分計算します。
➁「建物」全体の固定資産税評価額を、各戸に、延べ床面積の比率で案分します。
①と②を合算した金額が相続税評価額となります。
2. タワマン節税は元々できなくなったのでは?
平成29年4月以降に売買契約したタワーマンションの固定資産税と不動産取得税について、
実際の取引価格の傾向を踏まえて区分所有者ごとの税額を算出するよう補正が行われました。
元々同じタワーマンションであっても階層が高くなるほど実勢価格も上昇していきますが、
それまでの固定資産税評価額は、そういう条件が考慮されていなかったので、
高い階層の部屋ほど実勢価格と比較して固定資産税評価額も低く評価されていました。
この補正により、家屋の相続税評価額=固定資産税評価額であるので、相続税評価額も補正されていました。
しかし、その補正レベルは全体から見て不足していたのかもしれません。
3. 事件の経緯
① 91歳の男性が6億円の資産を所有していた。
② 平成21年に10億円の融資を受けて、8億円と5億円のマンションを購入。
➂ 平成24年に死亡。 マンションは各々2億円と1億円で相続税評価(財産評価基本通達)した申告書を提出。 相続税0円。
④ 平成25年に5億円の方のマンションを5億円で売却
⑤ 平成28年 国税局は不動産鑑定士の鑑定評価で各々7.5億円と5億円での更正処分
⑥ 令和4年4月19日 最高裁判決により、国側が勝訴
本件は、財産評価基本通達で評価された金額を
⑤の時点で国税局が
財産評価基本通達第1章総則6項(この通達の定めにより難い場合の評価)
6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
により否認したものです。
「財産評価基本通達」とは
国税庁長官が国税局や税務署等の下位の各機関に対して出した指示
にすぎませんが、
課税当局側が評価を行っていることは広く認知されており、
納税者側の実務的にも、この通達を用いて時価を算出するのが一般的になっています。
これを否認したということで衝撃的な事件であり、
これからの相続税申告案件においても大きな注意を払うべき事件です。
ただ国税局および裁判所がそのような判断をした背景に
①融資を行った銀行の稟議書にマンション購入したい目的に「相続税節税」と記載されてあった
②マンションを相続税申告前に売却されていた
ことがあると思われます。
なので、露骨な相続税節税のためのスキームは、
国税庁が伝家の宝刀財産評価基本通達第1章総則6項を振りかざして
認められなくなる可能性が高いと思われますので、ご注意下さい。
私個人としては
①不動産投資として有効なマンション投資であれば結果は違っていたのかも。収支モデルに元々問題があったのでは?
②申告後、5年程度は所有し続けていた方がよかったのでは?
という思いはあります。
無理な節税は結局はムダになります。
相続税申告相談プラザひろしまでは、適正な節税相談をさせていただきますので、
気軽にご相談下さい。
FMちゅーピー令和4年5月19日放送分(放送開始101回目)