高齢化が進む現代社会において、認知症が社会問題になりつつあります。まず認知症になって何ができなくなるか?を理解して、その対策を考えていきましょう。
まず
1. 衣食住の生活費を本人の預金口座から引きだせなくなる可能性がでてきます。
金融機関で親が認知症で預金手続きができないという事実を伝えてしまうと、
電気・ガス・水道代とか、賃貸住宅に住んでいれば家賃とか、
食事・洋服などの生活上必要な費用とか、
老人ホームの利用料・介護ヘルパー・医薬品代とか
その他諸々の費用を支払うために親の口座から現金を引き出すことができなくなる可能性があります。
2. 老人ホーム入所金捻出のための実家売却ができなくなる可能性があります。
現在自宅に居住している高齢者の方で将来老人ホームに入所される方は、認知症が発症している可能性を無視できません。
認知症を発症している場合、不動産を売却するという行為が困難になり、
実家の売却代金を老人ホーム入所金に充てようと目論見が崩れ、生活設計が困難になる可能性があります。
3. 遺言書が書けません。
認知症を発症して法律行為ができなくなっていれば、もはや遺言書を書くことができず、
自分が死んだ際に、遺産を誰に引き継いでもらいたいかという本人の意思を法律上反映させることができません。
4. アパートの大規模な修繕ができません。
アパートの修繕も契約行為なので、認知症を発症していれば障害があります。
ましてや大きな出費を伴う大規模な修繕は困難です。
5. アパートの新規の入居者との賃貸契約ができません。
厳密に言えば、賃貸契約も法律行為なので、認知症を発症しまえばアパートの新規の入居者との賃貸契約もできません。
現状ではそういった状況においても不動産管理会社により契約ができていると思いますが、
コンプライアンス的には今後難しくなる可能性もあります。
6. 住宅ローン・アパートローンの優遇金利の更新ができません。
住宅ローン・アパートローンを借りる際には、銀行の提案により優遇金利での融資契約になっていることが多いです。
しかし、この契約の期限が到来して更新すべき時期に認知症で契約行為ができなくなっていれば、
優遇金利前提の更新もできません。
7. 自分の所有する土地を大型ショッピングセンターに貸している定期借地契約の更新ができません。
定期借地契約は契約期間があり、自動更新はありません。
つまり改めて更新の契約を締結しなければいけないので、その時期に認知症になっていれば、更新が難しくなります。
定期借地契約の契約先は大手企業ということも多く、さらに定期借地契約は公正証書なので、認知症発症は契約更新の障害になりえます。
8. 生前贈与ができません。
一年間に贈与税負担なしで贈与できる限度額が110万円なので、
親族に毎年110万円ずつ贈与して相続税対策をしたいと思っていても、
認知症発症してしまえば、贈与は認められません。
親族が代わりに預金を振り込んでしまっていても認められません。
9.相続人が認知症になると遺産分割協議に参加することができません。
遺産分割についての話し合いは、相続人全員が自分の判断に基づいて意思決定する必要があるので、
相続人の中に判断能力が十分でない認知症の方がいると、そのままでは遺産分割協議を行うことはできません。
このように認知症を発症してしまうとさまざまなことができなくなります。
このような状況に対する主な対策としては
①成年後見制度
➁家族信託
が考えられますが、これはまた改めて説明させていただきたいと思います。
(FMちゅーピー「そうだ!棚田税理士の相続相談室」2021年9月2日放送分)