相続対策を検討している際に、いろんな障害があります。後々暗礁に乗り上げたり、相続対策が無効になったり、最近手掛けた相続対策の障害のいろいろを相続専門税理士の私がお伝えしますので、皆さんもご注意ください。
1.遺産分割協議に甘い見通し
複数の相続人が存在する初めての相続相談に際して、相談者の方にどのような遺産分割案を考えておられるのかと訊いたところ、明らかにその相談者に有利な内容の遺産分割案でした。それで相手の相続人は合意すると思いますか?と訊いたところ、「今までの相続人同士のつき合いの中で大丈夫じゃないか」とか「長男だから大丈夫」とか「親の面倒を見ていたから」とか答えられていたのですが、いざ遺産分割協議が始まると案の定揉めることとなりました。昔はそのような不均衡な遺産分割案も通ることもあったと思いますが、今ではそのような遺産分割案はほぼ通らないと思った方がよいと思います。本当にそのような遺産分割案を考えておられるのであれば、ぜひ被相続人の方に生前に遺言を書いてもらうことをお勧めします。
2.遺言書の記載内容が不十分なため、遺産分割協議が新たに必要となる
1に示したような理由でせっかく被相続人に書いてもらった自筆遺言ですが、いざ相続が発生してその遺言を法務局や金融機関に持ち込んだところ、その遺言の記載内容が不十分だという理由で、遺言は無効扱いとなり、結局遺産分割協議となるケースもあります。
自筆遺言は、無料でできる手軽だという長所もありますが、いざ相続が発生した際に遺言が無効扱いとなると、何にもなりません。なぜ遺言が必要なのかとか、相続財産の影響力も考えればある程度の費用をかけて専門家や公証役場を利用する方法も考えられた方がよいかもしれません。
3.相続税対策のための養子縁組が、「争族」に発展
相続税の基礎控除は、3000万円+600万円×法定相続人の数であり、
生命保険の非課税枠も、500万円×法定相続人の数
法定相続人の数が増えれば、相続税は節税できます。
昔から相続税の節税対策として孫を養子にして法定相続人を増やし、その結果として相続税の基礎控除・生命保険の非課税枠を増やす方法が議題に挙げられることが時々あります。
しかし、単なる法定相続人の数を増やすだけの養子縁組のつもりであっても、トラブルが起きることがあります。
例えば長男・長女がいて、長男の提案により長男の子を養子縁組した際に、
長女側が法定相続分が養子縁組前であれば1/2であったのが、長男の子の養子縁組後には1/3となり不利になったと不満を表明されたことがあります。
結局は遺言を書くつもりであれば、法定相続分が結果的に下がろうと関係ないはずなのですが、法定相続分を一方的に下げられると勘違いされて家族不和が起きる可能性は否めませんので、ご注意下さい。
4.物納に期待しすぎ
「物納」とは、相続税を金銭納付することが難しい場合に申請して認められれれば、金銭ではなく相続財産の不動産などで納付できる制度です。
相続税が多額にかかる家庭で、相続財産の多くを不動産が占めている場合、相続税が被相続人の金融資産で賄えないことがあります。
その場合、よく中途半端な知識で被相続人の不動産を物納すればよいと放置されることがあります。
ただし、物納は認められる条件がかなり厳しく、その事前準備も簡単ではなく、全国でも年間100件も認められておりません。
となると、不動産の一部を売却してその売却代金を納税資金に充てないといけません。相続税の納付は、基本的に相続が発生したことを知った日から10ケ月以内ですから、限られた時間内に不動産を売ろうとすると買い叩かれ、思った金額で売却できないことも考えられます。
「物納」で解決することもありえますが、油断せず、前もって不動産を売却して早めに資金確保した方がよいでしょう。
5.アパート建築による相続税節税対策を積極的にして、資金不足になり、納税できず
銀行から借金をして、更地の上にアパートを建てれば、相続税を節税できるケースは非常に多いです。
しかし、アパートを建設資金を全額ローンでできなかったり、不動産取得税・担保設定費用等当初想定していなかった経費を自己資金で賄ったりしていれば、自己資金が減少します。
また、今は建設コスト自体が高騰しており、たとえ底地を自前で所有していても、
(家賃-銀行借入金の月々の返済額)には余裕がなくなっているケースも増え、月々の資金繰りを圧迫してきています。
よって、アパート建設により、自己資金を減らして、結果的にいざという時の相続税納税ができなくなるというケースも発生していますので、ご注意ください。
6.被相続人が不動産賃貸収入を確定申告しておらず、小規模宅地等の評価減の特例を適用できず
アパートを建築して相続税を節税する方法は、次の理由です。
①アパートの家屋の相続税評価額が固定資産税評価額をベースとしており、建築価額よりもかなり低くなっています。
➁小規模宅地等の評価減の特例では、アパートの底地を貸付事業用宅地等として、200㎡までの評価額を50%減額できます。
ここで➁の小規模宅地等の評価減の特例として、被相続人が生前に不動産賃貸収入を確定申告している必要があります。
そのため生前に確定申告されていなければ、せっかく被相続人が生前にアパート運営していても、
相続発生後に小規模宅地等の評価減の特例が適用できなくなるケースもあります。
このように、相続対策を実行していても、当初考えていた結果にならないこともあります。
一旦相続対策を実行しても、時の経過とともに状況も変わりますし、相続経験の豊富な税理士事務所がフォローしていないと
想定内の効果が発揮できないことも起きます。
相続税申告相談プラザひろしまは相続税申告だけでなく、生前対策にも積極的で、一旦実行された相続対策の分析もできますので、
安心してご相談ください
令和6年11月7日FMちゅーピー出演放送161回目