市街地農地とは?市街地周辺農地との見分け方や評価方法を解説

市街地農地とは、市街化区域の中に存在する農地のことです。相続遺産のなかに市街地農地が含まれるときは、他の農地と異なる方法で相続税評価額を算出しなければいけないため注意が必要です。

本記事では、市街地農地の概要や相続申告の際に必要となる書類の書き方を解説します。スムーズな手続きのためにも、正しい知識を身につけておきましょう。

市街地農地とは

市街地農地とは、市街化区域のなかに存在する農地のことです。特徴として、農地以外の用途に転用しやすいという点が挙げられます

市街化区域とは、家屋や商業施設、商店などが密集した土地のほか、今後開発により市街化が進められる区域のことです。他にも、市街化区域にある山林を「市街地山林」、市街化区域にある野原を「市街地野原」と区別し、これらをまとめて「市街地農地等」と読んでいます。

市街地農地に該当する土地の具体的な要件は、以下の3つです。このうち1つでも当てはまる項目がある場合は、市街地農地であると判断されます。

  • 市街化区域のなかに存在する、農業のために使用される土地
  • 農地法第4条・第5条に規定される許可を受けた農地
  • 農地法等の規定により転用許可を要しないものとして、都道府県知事の指定を受けた農地

市街地農地は、農業のためだけに使用される土地とは大きく価値が異なります。なぜなら、将来的に宅地化されて別の用途で使用される可能性があるためです。

そのため、市街地農地を相続する際は、一般的な農地とは異なる方法で価値を評価しなければいけません。

市街地農地と市街地周辺農地の違いと見分け方

市街地農地と似た言葉として、「市街地周辺農地」というものがあります。一見すると、それぞれの違いはわかりにくいかもしれません。

以下では、2つの農地の違いと見分け方を説明します。

市街地農地と市街地周辺農地の違い

市街地農地と市街地周辺農地の違いは、「農地以外への転用許可を受けているかどうか」というポイントです。

市街地周辺農地は、第3種農地に分類される土地です。第3種農地とは、市街地の区域内もしくは市街化の傾向が著しい区域に存在している農地を指します。また、第3種農地に該当しない農地であっても、第3種農地に準ずる農地と認められれば市街地周辺農地になります。

市街地農地は、すでに宅地等への転用許可を受けていたり、農業委員会へ届け出るだけで転用できたり、転用許可が必要なかったりする農地です。対して市街地周辺農地は、農地等以外への転用が許可される地域に該当するものの、まだ転用の許可を受けていない農地を指します。

市街地周辺農地の転用申請は原則認められますが、すでに転用許可を受けている市街地農地と同一ではないため、市街地周辺農地として区別しているのです。

市街地農地と市街地周辺農地の見分け方

市街地農地と市街地周辺農地は、2つの方法で見分けることが可能です。

1つ目は、「農地が市街化区域のなかに存在しているかどうか」で見分ける方法です。

確認したい農地が市街化区域内にある場合は、市街地農地であると判断されます。それ以外の市街化調整区域内にある場合は、第3種農地に該当するかを確認しましょう。第3種農地に該当すれば、市街地農地であると判断できます。

2つ目は、国税庁ホームページで公表されている評価倍率表で確認する方法です。評価倍率表に「比準」「市比準」と記載されている農地であれば市街地農地、「周比準」と記載されている農地であれば市街地周辺農地に該当します。

市街地農地の評価方法

先述したように、市街地農地は他の農地と評価方法が異なります。ここでは市街地農地の評価方法について、詳細を解説します。

宅地比準方式

宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の価額から、造成費を控除して評価する方法です。

具体的に、次の式を用いて評価額を算出します。

(農地が宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額−宅地転用に必要な1㎡当たりの造成費)×地積

なお、農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額は次の方法で調べられます。

  • 路線価地域→路線価で算出する
  • 倍率地域→評価しようとする農地にもっとも近接していて、用途・道路からの距離や形状がもっとも類似している宅地の評価額をもとに算出する

このように、地域によって調べ方が異なる点に注意しましょう。

倍率方式

倍率方式とは、路線価が定められていない地域における土地相続評価方法です。倍率は国税庁によって定められており、評価倍率表で調べることが可能です。

市街地農地が倍率地域内にあり、評価倍率表で倍率が定められている場合は、農地の固定資産税評価額に倍率を乗じて土地の価値を評価します。

なお固定資産税評価額は、毎年4~5月に納税者へ送付される「固定資産税の課税明細書」で確認できます。

造成費相当額について

市街地農地を宅地比準方式で評価するときは、1㎡あたりの造成費を求める必要があります。

造成費とは、農地などを宅地として利用するときに必要な費用です。たとえば、次のような工事の費用が含まれます。

工事名概要
整地凹凸がある地面を整える工事
伐採・抜根樹木を伐採し、根などを除去する工事
地盤改良基礎の下の地盤を補強する工事
土盛路地よりも低い土地を地上げする工事
土止土手などで土砂が崩れることを防ぐ工事

宅地造成費の金額は、都道府県によって異なります。また、平坦地か傾斜地かによっても金額が異なるため注意が必要です。

広島県における平坦地と傾斜地の宅地造成費をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。

◎平坦地

工事名費用
整地費700円/1㎡
伐採・抜根費1,000円/1㎡
地盤改良費1,800円/1㎡
土盛費6,600円/1㎥
土止費66,400円/1㎡
※出典:路線価図・評価倍率表「令和2年 宅地造成費の金額表

◎傾斜地

傾斜度金額
3度超 5度以下17,700円/㎡
5度超 10度以下21,400円/㎡
10度超 15度以下32,800円/㎡
5度超 20度以下46,200円/㎡
20度超 25度以下51,300円/㎡
25度超 30度以下55,300円/㎡
※出典:路線価図・評価倍率表「令和2年 宅地造成費の金額表

市街地農地等の評価明細書の書き方

相続財産のなかに市街地農地が含まれるときは「市街地農地等の評価明細書」を作成して、相続税の申告書に添付しなければいけません。フォーマットは国税庁のホームページより入手できるので、忘れずに記入して提出しましょう。

書き方の手順は、次のとおりです。

  1. 用紙上部の「市街地農地」に丸を付ける
  2. 対象となる農地の「所在地番」「現況地目」「地積」を記載する
  3. 「評価の基とした宅地の1㎡当たりの評価額」に、比準土地の相続税評価額の計算方法を記載する
  4. 倍率地域内の場合は、「評価する農地等が宅地であるとした場合の1㎡当たりの評価額」に評価額を記載する
  5. 土地に応じた造成費を「宅地造成費の計算」に記載する
  6. 比準土地の1㎡当たりの評価額から造成費を差し引いて、「市街地農地の評価額」を算出する

ご自身で対応することが難しい場合は、税理士など専門知識を持ったプロに相談するのもひとつの手です。

市街地農地の相続税評価は複雑!正確に評価するなら専門家に相談を

市街地農地とは、市街地のなかに存在している農地のことです。住宅への転用が見込まれる市街地農地は、一般的な農地と評価方法が異なります。相続する際は、評価額の計算に注意が必要です。

市街地農地の相続税評価を正確に算出するためには、専門的な知識が必要となります。わからないことがある場合は、税理士に相談したほうがスムーズでしょう。

相続と向き合い続けて30年以上の「相続税申告相談プラザひろしま」では、相続税評価や相続の手続きをサポートしております。お困りのことがあれば、お気軽にお問い合わせください。