一定額以上の遺産を相続するときは、相続税の納付義務が発生します。相続税が発生するかどうか、どれくらいの金額になるのかは条件によって異なります。
もしも「相続税が発生するのか知りたい」「相続税の金額を知りたい」と考えているのなら、自分で相続税の資産やシミュレーションをしてみることがおすすめです。
本記事では、相続税の計算方法を詳しく解説します。自分で相続税を資産してみたい方は、ぜひこの記事の手順に沿って計算してみてください。
相続税の試算をする方法は2つ
相続税の試算をする方法は、次の2つです。
- 自分で計算する
- シミュレーションサイト(アプリ)を利用する
まずは、各試算方法の詳細を詳しくみていきましょう。
自分で計算する
手間はかかりますが、相続税は自分で試算することが可能です。詳しい計算方法は後述しますが、資産総額を把握し、基礎控除や各種減額などの計算を行えば誰でも相続税額を算出できます。
ただし、総資産を整理して控除額を計算するときは手間がかかりますし、正しく計算できない可能性もあります。そのため、手軽さや正確さを求める方にはおすすめできません。
シミュレーションサイト(アプリ)を利用する
より簡単に相続税を試算したいなら、シミュレーションサイト(アプリ)の活用がおすすめです。画面の指示に沿って必要項目を入力するだけで、複雑な計算をすることなく簡単に相続税が試算できます。
とにかく手軽に計算が可能なため、相続税に関する知識を持っていない方にもおすすめの試算方法です。無料で利用できるサイトやアプリが数多く存在しているので、ぜひ活用してみてください。
なお、相続税申告プラザひろしまでも相続税簡易シミュレーションを提供しています。相続税を試算してみたい方は、こちらからご利用ください。
自分で計算するための4STEP
相続税を自分で試算する場合は、次の4つのステップで計算を進めていく必要があります。
- 遺産総額を集計する
- 基礎控除額を差し引く
- 相続税の総額を計算する
- 各自の納付税額を計算する
以下では、各ステップの詳細を解説します。
STEP1 遺産総額を集計する
まずは、遺産総額を集計しましょう。遺産総額の求め方は以下のとおりです。
遺産総額=(プラスの財産+みなし相続財産+相続開始前3年以内の贈与)-マイナスの財産(債務・葬式費用) |
遺産総額には、プラスの財産のみならずマイナスの財産も含まれます。各財産の詳細は以下のとおりです。
財産の種類 | 概要 | 具体例 |
プラスの財産 | 経済的な価値のある財産 | 現金、預貯金、不動産、車、電子マネー、骨董品、投資信託など |
みなし相続財産 | 相続発生時点で被相続人が保有していたわけではないが、相続財産とみなす必要がある財産 | 死亡保険、死亡退職金など |
相続開始前3年以内の贈与 | 相続開始から3年前までに行われた、被相続人から法定相続人への贈与 | – |
マイナスの財産 | 相続人が亡くなった時点で支払義務が発生していた費用 | 未払いの税金、葬儀費用など |
遺産総額を算出するために、まずは各財産の価格を書き出して整理しましょう。なお、不動産は毎年送付される固定資産税の納付書に記載された「評価額」が相続税の評価額になります。
STEP2 基礎控除額を差し引く
遺産総額を算出したら、その金額から「基礎控除額」を差し引きましょう。基礎控除額の算出方法は、以下のとおりです。
基礎控除額=(3,000万円+600万円✕法定相続人の数) |
つまり法定相続人が3人いる場合、「基礎控除額=3,000万円+600万円✕3人=4,800万円」です。
相続税が課税される遺産の総額は、以下のように求められます。
課税遺産総額=遺産総額(課税価格)-基礎控除額 |
この計算をしたときに課税遺産総額がマイナスになった場合、相続税は発生せず税務署へ申告する必要もありません。課税遺産総額がプラスになった場合は、プラスになった金額に対して相続税を計算します。
STEP3 相続税の総額を計算する
次に、相続税の計算を行います。相続税は、法定相続分で分けた場合の金額を相続人ごとに算出し、各人の金額に税率をかけて計算します。課税遺産総額にそのまま税率をかけるわけではない点に注意しましょう。
なお、法定相続分は以下のように定められています。
相続人の状況 | 法定相続分 |
配偶者+子どもが相続人の場合 | 2分の1ずつ |
配偶者+被相続人の親・祖父母が相続人の場合 | ・配偶者3分の2 ・親または祖父母の全員で3分の1 |
配偶者+兄弟姉妹が相続人の場合 | ・配偶者4分の3 ・兄弟姉妹の全員で4分の1 |
相続税の税率は以下の通りです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
この速算表で計算した法定相続人ごとの税額を合計したものが、支払うべき相続税の総額となります。
たとえば、基礎控除後の遺産総額が5,000万円で、配偶者・2人の子どもで遺産相続するとしましょう。この場合、法定相続分は「配偶者2分の1、子ども全員で2分の1」となるため、各人の相続税は以下のように計算できます。
- 配偶者:2,500万円×15%−50万円=325万円
- 子ども1:1,250万円×15%−50万円=137.5万円
- 子ども2:1,250万円×15%−50万円=137.5万円
この計算から、支払うべき相続税の総額は「325万円+137.5万円+137.5万円=600万円」ということになるのです。
STEP4 各自の納付税額を計算する
最後に、算出した相続税の総額を実際に相続する割合で振り分けましょう。
たとえば、相続税の総額が600万円で配偶者・2人の子どもが3分の1ずつ遺産を相続したとすると、各人の相続税は「600万円×1/3=200万円」ということになります。
以上で、相続税の計算は完了です。
相続税が減額される可能性もある
相続税には税額を軽減する制度がいくつかあり、状況によっては減額される可能性があります。具体的な制度としては、以下のようなものが挙げられます。
- 配偶者の税額軽減控除
- 生命保険金の非課税枠
- 小規模宅地等の特例
相続税の支払い負担を軽減するためにも、以下で各項目をしっかりとみておきましょう。
配偶者の税額軽減控除
相続人が配偶者の場合は「配偶者の税額軽減控除」という制度が利用できます。
この制度は「実際に取得した遺産額が配偶者の法定相続分」または「1億6千万円」のいずれか多い方の金額までは、相続税がかからないというものです。
ただし、この制度が適用となるには次の要件を満たす必要があるため注意が必要です。
- 法律上の婚姻関係がある
- 相続税の申告と遺産分割をしている
- 申告期限までに遺産分割が確定している
たとえば、遺産が2億円あり相続人が配偶者のみの場合、法定相続分は100%となります。このとき、2億円の遺産をすべて相続しても配偶者には相続税がかかりません。
生命保険金の非課税枠
生命保険金の非課税枠とは、一定額までの死亡保険金が非課税になる制度です。
本来、被相続人が死亡したことによって取得した生命保険や損害補償金のうち、保険料を一部または全部を被相続人が負担していたものには相続税がかかります。しかしこの制度を使えば、死亡保険金の受取人が相続人の場合、以下の式で算出される「非課税限度額」を超えた部分のみが相続税の課税対象となります。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数 |
なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金については、非課税の適用はありません。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、要件を満たした小規模な宅地を相続した場合、土地の評価額が最大で80%減額される制度です。要件が厳しく複雑な制度ですが、減額割合が大きいため該当する方は必ず活用しましょう。小規模宅地等の特例の対象となる土地は、次の3種類です。
特定居住用宅地等 | 被相続人が住んでいた宅地で、配偶者または一定の条件を満たす親族が取得したもの |
・特定事業用宅地等 ・特定同族会社事業用宅地等 | 一定の法人の事業の用に供されていた宅地等で、一定の要件のすべてに該当する被相続人の親族が相続したもの |
貸付事業用宅地等 | 被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業および準事業に限る)の用に供されていた宅地等で、一定の要件のすべてに該当する被相続人の親族が相続したもの |
なお小規模宅地等の特例は、申告後に更正請求ができない制度となっています。「もっと有利な申告方法があったのに」とあとから気づいても更正はできないため、税理士などの専門家に申告を行ってもらうことを推奨します。
二次相続
二次相続とは、最初の相続(一次相続)で相続人となった配偶者が亡くなり、子どもたちだけに遺産が相続されることを指します。たとえば父親が最初に亡くなり、続いて母親も亡くなることで、父親と母親の両方の財産を子どもが相続するケースが二次相続に該当するのです。
二次相続には、一次相続では発生しなかった2つの注意点が存在しています。ここでは、それぞれを詳しくみてみましょう。
「相続税の特例」への影響
二次相続が発生すると、相続税が減額される特例に影響が出てきます。
まず、配偶者が相続人にならない二次相続では、配偶者控除が適用されません。
配偶者控除は控除額が大きいため、一次相続の際は配偶者へ多く相続を行うことが一般的です。しかし、二次相続では配偶者控除が使えないため、相続税が高額になる傾向にあります。
次に、小規模宅地等の特例の条件が増える点にも気をつけなければいけません。
配偶者が相続する場合は、小規模宅地等の特例によって評価額を最大80%減とすることが可能です。しかし、配偶者以外の親族が相続した場合は、適用の要件が厳しくなります。
たとえば、実家から離れた場所で暮らす子どもが相続した場合、被相続人の死亡後すぐに転居した場合などの二次相続では、この特例の対象から外れてしまうおそれがあります。
二次相続のリスク
二次相続では相続人が子どものみになるため、遺産分割協議がスムーズに進まない可能性があります。
一次相続では、基本的に親主導で遺産分割協議を進めていくことになります。しかし、二次相続では主導権を握る人がいなくなるため、協議がまとまりにくくなってしまうケースが多いのです。
最悪の場合、兄弟姉妹の関係性が悪化してしまうことも珍しくありません。そのため、二次相続が発生しそうなときは対策をしておくことが大切なのです。
二次相続への対策
二次相続のデメリットやリスクに対策する方法としては、以下の2点が挙げられます。
- 財産を被相続人から相続人に移しておく
- 相続税対策を使える状態を整えておく
まず、二次相続が発生する前までに、生前贈与などで可能な限り財産を相続しておきましょう。1年間に贈与する財産が110万円以下であれば、贈与税の控除枠を使えるため税金がかかりません。
生前贈与には「希望通りに相続できる」「認知症リスクが回避できる」といったメリットがあります。ただし、生前贈与として認められるのは、なくなる3年以前の財産である点に注意が必要です。
また、相続税を少しでも減らせるように対策を行うことも肝心です。
- 生命保険を活用する
- 一次相続で子どもに実家を相続させる
たとえば上記のような対策をすると、相続税の軽減制度によって税負担を抑えられます。
相続の際は、一次相続だけを考えた相続税対策は避けるべきです。二次相続の可能性を想定のうえ、ご自身やご家族にとって最善の選択をすることが大切です。
現実を加味しての概算を出すなら専門家に相談しよう!
相続税を算出するときは、自分で計算する方法とシミュレーションサイト(アプリ)を利用する方法の2つの選択肢があります。自分で相続税を計算するときは、遺産総額を整理したり複雑な計算をしたりと手間がかかる点に注意しましょう。
また、相続税には税額を軽減できる制度がいくつか存在しており、それをうまく活用することで節税効果を得られます。さまざまな条件・制度を加味したうえで相続税を計算するのは難しいため、正しく相続税を算出したい方には、専門知識をもつ税理士に相談することがおおすすめです。
「相続税申告プラザひろしま」では、相続税の計算や申告をサポートしております。「まずは気軽に相続税を試算してみたい」「計算から申告まで一任したい」という方は、お気軽にご相談ください。