相続税路線価と固定資産税路線価の違いは?調べ方や計算方法、注意点を解説

路線価とは、土地の評価額を算出するときに基準となる価格のことです。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があるので、それぞれの用途や調べ方を疑問に思っている方は多いかもしれません。これから相続税の申告・納付を行う方は、路線価に関する正しい知識を持っておく必要があります。

この記事では、相続税路線価と固定資産税路線価の基本的な知識を紹介します。違いをよく理解して、適正な活用を目指しましょう。

路線価とは

「路線価」とは、土地の評価額を算出するときに基準とする、道路に割り振られた土地の1平方メートルあたりの単価です。主に相続税や贈与税、固定資産税の算定に使用されます。

路線価は、「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類に分けられ、異なる目的で使用されています。ここでは、2つの路線価について詳しく学んでいきましょう。

相続税路線価とは

項目概要
算出根拠・相続税
・贈与税
単位1,000円単位
評価元国税庁
基準日1月1日
公表時期毎年7月ごろ

相続税路線価は、相続税や贈与税の算定に使用される路線価です。単に「路線価」というときは、相続税路線価のことを指すケースがほとんどです。

毎年1月1日に国税庁によって評価が行われ、7月ごろに公表されます。この相続税路線価は、その年の1月1日から12月31までの間に発生した相続や贈与に対して適用されます。

相続税路線価は、実際の取引価格よりも低い「公示価格の約80%」程度に設定されている点が特徴です。これにより、納税者の負担軽減と公平な課税の両方を実現しています。

固定資産税路線価とは

項目概要
算出根拠・固定資産税
・都市計画税
・登録免許税
・不動産取得税
単位1円単位
評価元各地方自治体
基準日基準年の1月1日(3年に一度)
公表時期基準年の4月ごろ

固定資産税路線価は、主に固定資産税の算定に使用される路線価です。公表は3年に一度で、基準年の1月1日に各自治体によって評価が行われて、4月ごろに公表されます。

固定資産税路線価は、地域の実情に合わせて各自治体が独自に設定しています。そのため、同じ場所であったとしても、相続税路線価とは異なる値になることが珍しくありません。

この固定資産税路線価をもとにして、土地の面積や形状などの要素を加味しながら、最終的な固定資産税評価額が決定されます。

相続税路線価と固定資産税路線価の違い

相続税路線価と固定資産税路線価の違いは、表のとおりです。

項目相続税路線価固定資産税路線価
算出根拠・相続税
・贈与税
・固定資産税
・都市計画税
・登録免許税
・不動産取得税
単位1,000円単位1円単位
評価元国税庁各地方自治体
基準日1月1日基準年の1月1日(3年に一度)
公表時期毎年7月ごろ基準年の4月ごろ

大きな違いは、それぞれの算出根拠となる税金の種類です。相続や贈与によって土地を手に入れた場合は「相続税路線価」、それ以外で税金を計算する場合は「固定資産税路線価」を用います。

単位や基準日、公表時期が異なる点にも注意が必要です。相続税路線価は毎年7月ごろに1,000円単位で、固定資産税路線価は3年に一度の基準年の4月ごろに1円単位で公表されます。

路線価と公示価格、実勢価値の違い

路線価と関連する用語として、「公示価格」と「実勢価格」があります。

公示価格とは、国土交通省が公表している全国約2万6,000地点の土地単価です。土地の客観的な価値を示すもので、土地取引や資産評価を行うときに目安となります。

実勢価格は、実際に不動産市場で取引されている価格です。市場の需要と供給、経済の状況、地域の特性などさまざまな要因によって決定されています。

路線価は公示価格の約80%、公示価格は実勢価格の50~90%程度になるとイメージしておくとわかりやすいでしょう。一般的に、郊外や地方の公示価格は実勢価格に近く、都市部は公示価格よりも実勢価格が上回るケースが多い傾向にあります。

相続税路線価と固定資産税路線価の関係式

異なる目的で使用されている相続税路線価と固定資産税路線価ですが、それぞれが完全に独立しているわけではありません。

両者は、次の関係式で表すことが可能です。

相続税路線価=固定資産税路線価÷0.7×0.8固定資産税路線価=相続税路線価÷0.8×0.7

相続税路線価は公示価格の約8割、固定資産税路線価は公示価格の約7割になるよう設定されています。そのため、どちらか一方の評価額がわかれば、もう一方の評価額を求めることが可能なのです。

ただし、上記の計算式で算出されるのは概算で、実際の路線価と異なる場合もあります。正しい路線価を知りたいときは、このあとに紹介する路線価の調べ方をご参照ください。

相続税路線価と固定資産税路線価の計算方法

相続税路線価と固定資産税路線価を用いて土地の評価額を算出するときは、どのような計算を行えば良いのでしょうか。

ここでは、それぞれの詳しい計算方法についてみていきましょう。

相続税路線価の計算方法

相続税路線価を用いた土地評価額の計算方法は、次のとおりです。

相続税評価額=相続税路線価×土地の面積×奥行価格補正率×その他の補正率

相続税路線価は、対象となる土地の前面道路(路線)に割り振られています。1平方メートル当たりの評価額が1,000円単位で設定されており、「300A」などの数字とアルファベットで表されます。

例えば「300A」と記載がある場合は、相続税路線価は1平方メートルあたり30万円ということです。40平米ある土地の場合、相続税評価額は「30万円×40平米=1,200万円」と算出できます。

アルファベットは「借地権割合」と呼ばれ、借地権や底地(貸地)の価値を算定するときに使います。また、土地の形状や特性に合わせて「奥行価格補正」や「貸家建付地」としての調整を行う必要があるので、計算時は専門的な知識が不可欠です。

計算された相続税評価額は、相続税や贈与税を算定する根拠として用いられます。

固定資産税路線価の計算方法

相続税路線価を用いた土地の評価額の計算方法は、次のとおりです。

評価額=固定資産税路線価×土地の面積×奥行価格補正率×その他の補正率

固定資産税路線価も相続税路線価と同様、対象となる土地の前面道路(路線)に割り振られています。ただし、1円単位で設定されている点が大きく異なります。

道路前面に「300000」と記載されている場合、固定資産税路線価は1平方メートルあたり30万円ということです。固定資産税評価額も、土地の形状や特性に応じて調整が行われるので、実際はより計算が複雑になることがあります。

固定資産税路線価は、固定資産評価額を計算するために用いられます。しかし、固定資産税の納税通知書に市町村で評価された固定資産税評価額の記載があるため、土地の所有者が自分で計算することはほとんどありません。

計算が必要になるのは、第三者が土地を購入するにあたり、固定資産税や登録免許税の目安を知りたいときなどです

固定資産税路線価の調べ方

路線価は、「全国地価マップ」で調べることが可能です。しかし、なかには路線価のない地域も存在しているので、その場合は異なった方法で土地の評価額を算出する必要があります。

ここでは、路線価の詳しい調べ方について説明します。

全国地価マップを使用する場合

全国地価マップは、一般財団法人資産評価システム研究センターが提供している、路線価を検索できるWebサイトです。地図上で目的の場所を選択すれば、路線価を確認できます。

全国地価マップの使用方法は、次のとおりです。

  1. 全国地価マップにアクセスする
  2. 「固定資産税路線価等」もしくは「相続税路線価等」をクリックする
  3. 目的の地域を検索または地図上で選択する
  4. 該当する路線の路線価を確認する

相続税路線価は1平方メートルあたり1,000円単位、固定資産税路線価は1平方メートルあたり1円単位で表示されます。単位が異なるので、計算するときは注意が必要です。

路線価のない地域の場合

路線価が設定されていない郊外の地域は、「倍率地域」と呼ばれています。倍率地域では、国税庁が提供している「路線価図:評価倍率表」を用いて評価額を算出します。

評価倍率表の使い方は次の通りです。

  1. 路線価図:評価倍率表にアクセスする
  2. 該当地域の倍率を確認する
  3. 固定資産税評価額に倍率をかけて土地の評価額を計算する

なお、固定資産税路線価がない地域は、「状況類似地域」と呼ばれる、おおむね状況が類似している標準宅地の単価を使用します。標準宅地の単価は、全国地価マップで調べることが可能です。

路線価に関する注意点

路線価には、次のような注意点があります。

  • 相続税路線価と固定資産税路線価は発表される時期が異なる
  • 路線価の計算は公示価格の8割でなければならない

どのようなことなのか、詳細をみていきましょう。

相続税路線価と固定資産税路線価は発表される時期が異なる

相続税路線価と固定資産税路線価は、発表される時期が異なります

相続税路線価は「毎年」発表されるのに対し、固定資産税路線価は「3年に一度の基準年」に発表されます。そのため、両者の数値に差が生じることは珍しくありません。

税金を計算するときは、目的に応じた最新の路線価を用いることが大切です。

路線価の計算は公示価格の8割でなければならない?

路線価は、原則的に公示価格の約8割に設定されています。

路線価が公示価格よりも低く設定されている理由として、次のようなものが挙げられます。

  • 納税者の負担を軽減するため
  • 急な市場変化による不動産の価格変動リスクに対応するため
  • 相続や贈与による資産移転をスムーズにするため

以前は、路線価が公示価格の約7割で評価されていました。しかし、相続税対策における土地保有の優位性が高い状況が問題視され、税制のゆがみを解消する目的で約8割での評価に変更されています。

またバブル経済の崩壊後に起きた地価の急激な下落により、実勢価格と公示価格に大きな乖離が生まれたことも、路線価を引き上げる要因になりました。路線価を7割から8割に引き上げることは、実勢価格との差を縮小する目的もあります。

ただし「路線価は必ず公示価格の8割」というわけではなく、地域や状況によって多少の変動がある点に注意しましょう。路線価を知りたいときは、「全国地価マップ」や「路線価図:評価倍率表」で正しい価格を調べることをおすすめします。

路線価を用いた不動産の評価は経験豊富な税理士にお任せください

路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があり、異なった目的で使用されます。それぞれの違いをしっかりと理解し、適切に活用して正確な不動産の評価と税務申告を行いましょう。

路線価を用いた不動産の評価方法には、複雑で専門的な知識が必要です。一般の方が土地の評価額を正確に計算することは難しいので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続税申告相談プラザひろしま」では、相続と向き合い30年以上の専門家が税務手続きのサポートを実施しています。路線価でわからないことやお困りごとがあれば、お気軽にご相談ください。