相続税の脱税とは?税務調査でバレる理由とペナルティを完全解説

「脱税なんて、多額の財産を相続する富裕層だけの問題でしょう?」と思われるかもしれません。しかし、申告漏れや申告前のちょっとした行動が脱税だとみなされ、税務調査に発展するケースは少なくありません

この記事では、相続税の脱税手口やリスクについて紹介します。正しく相続税を申告するために、気をつけたいポイントを整理しておきましょう。

相続税の脱税とは何か

相続税の脱税とは、本来課税されるべき財産を意図的に隠したり、少なく申告したりする行為です。「うっかりミス」と「故意に隠す行為」はまったくの別物で、後者は税務署に“悪質”と判断されやすく、追徴課税に加えて刑事罰が科される可能性があります。

例えば、以下のようなケースは脱税だとみなされるリスクが高まります。

  • 相続した預金を一部だけ申告した
  • 被相続人の財産を別名義にしていた
  • 海外口座やタンス預金を隠して申告した

相続税の申告には、「知らなかった」では済まされないルールが多く存在しています。あとから困ることがないよう、何が脱税とみなされるのかについて、しっかりと確認しておきましょう。

脱税と申告ミスの違い

相続税の申告でよく混同されるのが、「脱税」と「申告ミス」です。

申告ミスとは、知識不足や確認漏れによって間違った税申告をしてしまうことです。例えば、財産の一部を把握していなかったり、評価を間違えて申告したりする場合が該当します。意図的でなければ修正申告で対応できますし、ペナルティも軽いもので済みます。

一方で、脱税は明らかに意図して財産を隠す行為です。故人の預金を他人のものと偽ったり、現金を引き出して隠したりする行為が含まれます。こちらは重加算税や延滞税が科されるだけでなく、悪質と判断されれば刑事罰の対象になることもあります。

脱税と節税の違い

「税金を減らしたい」という気持ちは誰でも抱くものですが、節税と脱税はまったくの別物です。

節税は、法律のルールにのっとって税負担を軽くする方法です。例えば、生前贈与や配偶者控除、小規模宅地等の特例などを活用することが節税にあたります。

一方で、脱税は法律のルールを違反して税金をごまかす行為です。例えば、わざと財産を隠したり、名義を変えてごまかしたりすると脱税になります。税務署に知られれば、重いペナルティが科される可能性があります。

節税は「ルールに従って行う工夫」、脱税は「ルールを破って税金をごまかす行為」です。相続税申告の際は、この違いをしっかり押さえておきましょう。

相続税の脱税手口8つ

相続税の脱税手口は、大きく分けると「意図的で悪質な脱税手口」「脱税とみなされる身近な手口」の2種類に分類できます。

ここでは、それぞれ具体的にどのような行為が該当するのか詳しくみていきましょう。

意図的で悪質な脱税手口

明らかに意図的で、税務署からも厳しくチェックされやすい脱税行為として、以下の4つが挙げられます。

  1. 相続財産を無記名の債権に変える
  2. 海外の金融機関に財産を隠す
  3. 預金の現金化(タンス預金)
  4. 寄付を偽装する

どのようなことなのか、詳細を解説します。

1. 相続財産を無記名の債権に変える

相続が発生する前に、現金や預金を無記名債権(持っている人が権利を持つ形式のもの)に変えておくケースです。例えば、商品券や割引債などが代表的な例です。

無記名の債券には持ち主の氏名が記載されないので、脱税の手法として悪用されることがあります。名義が記録されないため発見されにくい一方で、預金口座の引き出し履歴や購入履歴は記録されるので、調査で判明する可能性は非常に高くなります。

2. 海外の金融機関に財産を隠す

相続財産を海外の銀行口座や金融機関に移して、国内での申告から逃れようとするケースです。

かつては、「海外ならバレにくい」と思われていました。しかし、現在は外国の金融口座情報を自動的に交換する制度「CRS(共通報告基準)」により、日本の税務署にも海外口座の情報が届く仕組みが整っています。

海外資産の隠ぺいはバレるリスクが高く、脱税と判断された場合のペナルティも重くなりやすい傾向にあります。

3. 預金の現金化(タンス預金)

相続前に銀行預金を引き出し、自宅に現金として保管する「タンス預金」も、脱税とみなされることがあります。よくある手口として、被相続人の死亡前から数年かけて現金を引き出す計画的な脱税行為が挙げられます。

引き出しのタイミングや金額、生活費としては不自然な使い方などから、「相続財産を隠す意図があった」と判断されることは珍しくありません。特に、死亡直前に多額の引き出しがあると税務署のチェックが入りやすくなります。

4. 寄付を偽装する

一定の要件を満たす寄付は、相続税の課税対象になりません。この制度を悪用して、慈善団体や第三者に寄付したと装いながら家族や親族に財産を移すことも、悪質な脱税行為だとみなされます

寄付は社会貢献的な行為ですが、寄付先の実態やお金の流れが不明瞭だと、偽装と判断される可能性が高まります。税務署は寄付金の領収書や支払い記録も細かく確認するので、裏付けのない寄付はリスクが高いといえるでしょう。

脱税とみなされる身近な手口

次に、脱税とみなされる身近な手口を4つ紹介します。

  1. 相続税額の過少申告
  2. 名義預金の問題
  3. 相続した現金の無申告
  4. 死亡直前の預金引き出し

意図的に隠したつもりはなくても、結果的に“脱税”と判断されてしまうケースもあります。注意が必要な手口について、詳しくみていきましょう。

1. 相続税額の過少申告

財産を正しく評価せず、実際より少ない金額で申告してしまうケースです。例えば、不動産の評価額を低く見積もることが該当します。

実際は評価ミスだったとしても、明らかに不自然な場合や大きく評価が異なる場合は、「意図的に税額を少なくした」と判断され、調査対象になる可能性があります。過少申告が指摘されれば、脱税とみなされるため注意が必要です。

2. 名義預金の問題

被相続人(亡くなった人)の預金を、家族名義の口座に移しておくケースです。

例えば、子ども名義の口座でも、実際には被相続人が管理・入金していた場合、それは「名義預金」として相続財産に含まれます。また、子どもや孫名義の保険契約に関しても、名義預金と同じように相続財産として扱われます。

「名義が違うから大丈夫」と思い込んでいると、申告漏れになってしまうため危険です。どのような財産が被相続人の遺産に該当するのか、正しく把握しておくことが大切です。

3. 相続した現金の無申告

家の中に保管されていた現金(タンス預金など)を申告しない場合も、脱税とみなされることがあります。

「記録に残っていないお金だから見つからないだろう」と考え、申告財産から外すことは危険です。税務署は、過去の預金引き出し履歴や収支のバランスから現金の存在を推測することが可能なので、税務署の調査対象となる可能性は非常に高いでしょう。

4. 死亡直前の預金引き出し

被相続人が亡くなる直前に、家族が本人の口座から預金を引き出す行為にも注意が必要です。

葬儀費用や医療費などの「必要な支出」であれば問題にならない可能性があります。しかし、明確な使途がない場合は、「相続財産を隠した」と判断されることがあります。通帳の履歴や使い道を説明できるよう、記録を残しておくことが大切です。

相続税の脱税が税務署にバレる理由

相続税の脱税は、高い確率で税務署に知られてしまいます。その理由として、以下の4点が挙げられます。

  1. 国税総合管理システム(KSK)による情報管理
  2. 税務署の高度な調査手法
  3. 被相続人および相続人の口座調査
  4. 課税・徴収漏れに関する情報提供フォーム

それぞれどのようなことなのか、詳しくみていきましょう。

国税総合管理システム(KSK)による情報管理

国税総合管理(KSK)とは、税務署が保有する情報を一元的に管理するためのシステムです。全国の国税局(沖縄については国税事務所)と税務署をネットワークで結ぶことで、申告漏れや脱税を防ぐ目的で導入されました。

KSKでは、納税者の申告・納税状況はもちろん、被相続人や相続人の過去の所得・資産状況、銀行口座や不動産の取引記録などもチェックされています。そのため、相続税の申告内容と照らし合わせて不自然な点があれば、すぐに知られてしまうのです。

税務署の高度な調査手法

税務署は、提出される申告書類などの確認だけでなく、金融機関や法務局への照会、現地調査(実地調査)なども実施する権限を持っています。「誰がどのような財産を保有しているのか」「相続税の申告が必要と見込まれる人は誰なのか」を日々調査しているので、相続税申告から逃れることはできません。

必要があれば、家の中に保管されている現金や、通帳の動きまで詳細に調べられることもあります。特に、「申告内容に不審な点がある」「過去の申告に誤りがあった」という情報がある場合は、重点的に調査されやすくなります。

被相続人および相続人の口座調査

税務署は、被相続人だけでなく、相続人全員の銀行口座を対象に調査を行うことがあります。特に目を光らせているのが、「名義は別でも、実際には被相続人が管理していた預金(名義預金)」や、「亡くなる直前の不自然な出金・振込履歴」があるかどうかです。

子ども名義の口座に毎月一定額が振り込まれていたり、死亡直前にまとまった金額が引き出されていたりするケースが該当します。このような場合、「本当は被相続人の財産だったのでは?」と疑われるきっかけになります。

金融機関を通じた情報収集は、税務署にとって基本中の基本です。相続人側が「バレない」と思っていても、口座の動きから発覚するケースは決して珍しくありません。

課税・徴収漏れに関する情報提供フォーム

国税庁は、匿名で利用できる「課税・徴収漏れ情報の提供窓口」を設置しており、それを活用すれば誰でも自由に情報提供が可能です。身内や友人などの関係者から、「相続人の一部が財産を隠している」「申告されていない資産がある」といった情報が寄せられ、脱税が発覚することもあります。

こうした内部通報から税務調査に発展して、実際に申告漏れや脱税が判明した事例は複数報告されています。相続トラブルは感情的な対立を生みやすく、誰かの告発が脱税発覚きっかけになることもあるため、軽く考えることは危険です。

相続税の脱税がバレたときのペナルティ

脱税と判断された場合は、本来納めるべき相続税に加えて、罰則的な税金が加算されます。

具体的なペナルティの内容は、以下のとおりです。

税金の種類概要税率
無申告加算税期限内に申告しなかった場合に課される・自主申告:5%
・税務署の指摘で申告した場合:15%
※50万円超の部分は20%
過少申告加算税申告額が実際より少なかった場合に課される・自主申告:なし
・税務署の指摘で申告した場合:10%
※「期限内申告税額」または「50万円」超の部分は15%
重加算税特に悪質な場合に課される・無申告の場合:40%
・過少申告の場合:35%
延滞税※納付が遅れた場合に課される・相続税の納付期限から2か月以内:7.3%
・相続税の納付期限から2か月超:14.6%
※原則7.3%もしくは14.6%の税率だが、原則の税率と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合が適用
※※出典:財務省「加算税の概要」、国税庁「No.9205 延滞税について

これらの加算税は本来の税額に上乗せされるので、経済的な負担がかなり大きくなります。結果として、当初の2倍近くの税金を支払うことになるケースも少なくありません。

悪質度が高い場合は刑事罰の可能性も

脱税が特に悪質と認定された場合、「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方」が科される可能性があります。

実際に起訴されるのはまれですが、以下のような事情があると、刑事事件として扱われる可能性が高まります。

  • 繰り返し脱税している
  • 計画的に財産を隠していた
  • 調査に対して虚偽の説明をした

「相続税を多少ごまかしたくらいでそこまで大げさなことになるの?」と思われるかもしれません。しかし、意図的かつ悪質な脱税だと判断された場合、税務署は容赦なく対応してくることを理解しておきましょう。

※出典:e-Gov法令検索「相続税法第68条 第1項

相続税の脱税の時効

相続税の時効は、5年もしくは7年です。この時効は、相続税の申告期限である「被相続人が死亡したと認知した翌日から10か月後」の翌日から起算されます。

悪質性が低い、つまりミスや知識不足によって申告が漏れてしまった場合は、5年の時効が適用されることが一般的です。一方で、故意に財産を隠すなど悪質性が高い場合は、時効が7年に延長されます。

悪質性が低いと認められるかどうかは、各納税者の状況によって判断されます。「忘れた」と伝えても、意図的だと判断されて7年の時効が適用される可能性があることは押さえておきましょう。

【関連記事】相続税の時効は何年?さかのぼる年数や理由、ペナルティを解説

相続税の脱税や申告漏れを疑われないための対策

税務署に脱税や申告漏れの疑いをかけられないよう、以下の対策を取り入れてみてみましょう。

  • 税理士から適切な節税方法のアドバイスを受ける
  • 相続税に強い税理士に申告を任せる
  • 書面添付制度を活用する
  • 生前の財産状況を明確にしておく
  • 相続に関する情報を共有する

各対策のポイントを紹介します。

税理士から適切な節税方法のアドバイスを受ける

相続税のルールは複雑なので、一般の方がすべてを理解することは困難です。自己判断で申告してしまうと、申告漏れやミスにつながるリスクが高まります。

適切に申告できるか不安な方は、相続に詳しい税理士に相談しましょう。税の専門家から正しい節税対策や申告方法について具体的なアドバイスがもらえれば、相続時の負担を大きく軽減できます。

相続税に強い税理士に申告を任せる

税理士によって、得意分野は大きく異なります。特に、相続税申告は専門性が求められるので、相続税に精通した税理士を選ぶことが大切です。

経験が浅い税理士に依頼した場合、財産の評価ミスや特例の適用漏れが起きる可能性はゼロではありません。過去の申告実績や対応件数をよく確認して、信頼できる税理士を見極められると、安心して申告手続きを任せられるでしょう。

書面添付制度を活用する

書面添付制度とは、相続税申告書に、税理士が記載する「相続税申告書の内容説明」や「作成過程」を記載した書面を添えて提出できる制度です。

この制度を利用すると「申告内容は正しいですよ」と税理士からのお墨付きがもらえるので、税務署からの信頼性が高まります。結果として、税務調査の対象になりにくくなる効果が期待できます。

義務ではありませんが、リスクを減らしたい方にとっては有効な手段だといえるでしょう。

※出典:国税庁「書面添付・意見聴取制度

生前の財産状況を明確にしておく

相続が発生してから財産を整理するのは、非常に大変なことです。相続発生時に混乱が起きないよう、生前から財産の内容を把握して一覧にまとめておくことがおすすめです。

預金や不動産、有価証券はもちろん、名義の異なる資産や貸付金も整理しておきましょう。家族と一緒に財産目録を作ることで、トラブルや申告漏れの防止につながります。

相続に関する情報を共有する

相続の情報が特定の家族にしか知られていないと、財産の申告漏れや相続トラブルの原因になります。元気なうちから、財産の概要や希望する分配方法について、家族と共有しておくことが大切です。

情報をオープンにしておくことで、正確に申告しやすくなるうえ、相続人同士の信頼関係を保ちやすくなります。

違法な脱税ではなく合法的な節税を

相続税の脱税は、意図的であれ無意識であれ、発覚すれば大きなペナルティを受けるリスクがあります。特に、最近は情報管理や調査体制が厳しくなっているので、「バレないだろう」は通用しません。

一方で、法律にのっとった正しい節税や申告の方法はきちんと用意されています。不安なまま自己判断で進めるのではなく、相続に詳しい税理士に相談しながら進めることが、税負担を抑えるための一番の近道です。
相続税申告相談プラザひろしま」では、相続と向き合い30年以上の専門家が相続手続きのサポートを実施しています。相続税申告でわからないことやお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。