ただでさえ、多くの方にとって複雑で難解な相続税の申告ですが、電子申告の際は、添付書類の準備と提出方法に関するルール双方への理解が求められます。そのため、「電子申告を希望しているけれど、どのように手続きをすればよいかわからない」「どのような書類をどうやって提出すればよいのだろう」という疑問を抱いている方は少なくないでしょう。
この記事では、相続税の電子申告をスムーズに行うために必要な添付書類の種類と提出方法を解説します。初めて電子申告を行う方や書類の準備に不安を感じている方は、本記事でスムーズに申告するための知識を得ていきましょう。
相続税申告では添付しなければならない書類がある
相続税の申告では、窓口や郵送、電子申告のいずれの場合でも、いくつかの添付書類が必要となります。必要となる書類には、相続税法で提出が義務付けられているものと、任意で提出を求められるものの2種類があります。
以下では、それぞれの書類について具体的にみていきましょう。
添付が必須の書類
まずは、相続税を申告するときに必ず添付しなければいけない書類を紹介します。
以下の書類は、相続税法で添付が義務付けられています。
書類名 | 該当者 | 備考 |
法定相続情報一覧図の写し、または相続人全員が載っている戸籍謄本 | 全員 | コピー可 |
被相続人の他界した日以後に作成された、被相続人の戸籍の附票の写し | 相続時精算課税適用者 | コピー可 |
遺言書の写し、または遺産分割協議書の写し | ・軽減特例の適用を受ける配偶者 ・特定居住用宅地等についての特例の適用を受ける配偶者 ・特定居住用宅地等についての特例の適用を受ける配偶者以外の親族 ・特定居住用宅地等についての特例の適用を受ける持ち家のない親族 | 印鑑証明書も必須 |
親族の住民票等 | 特定居住用宅地等についての特例の適用を受ける配偶者以外の親族 | マイナンバーを持っている場合は不要 |
戸籍の附票等で、過去3年間の住所を明らかにする書類 | 特定居住用宅地等についての特例の適用を受ける持ち家のない親族 | マイナンバーを持っている場合は不要 |
「該当の親族が過去3年間に住んでいた建物」の所有者が、第三者であることを証する書類 | 特定居住用宅地等についての特例の適用を受ける持ち家のない親族 | 賃貸借契約書のコピー、不動産謄本、登記情報 等 |
「該当の親族が相続開始時点に住んでいた建物」の所有者を明らかにする不動産謄本や登記情報 | 特定居住用宅地等についての特例の適用を受ける持ち家のない親族 |
相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。なかには取得するまでに時間がかかる書類も含まれているので、早い段階から準備を進めることが大切です。
特に、特定居住用宅地等についての特例を適用する場合は、必要な添付資料の数が多くなるので、余裕を持った申告手続きが求められます。
添付が任意の書類
次に、相続税法で提出が義務付けられているわけではありませんが、申告手続きをスムーズに進めるために提出が推奨されている書類を紹介します。
国税庁が任意で提出を求めている書類は、以下のとおりです。
書類名 | 例 |
不動産関連の書類 | ・土地及び土地の上に存する権利の評価明細書 ・市街地農地等の評価明細書 ・定期借地権等の評価明細書 など |
有価証券の書類 | ・残高証明書 ・配当金支払通知書 など |
預貯金関係の書類 | 残高証明書 |
債務関連の書類 | 残高証明書 |
葬儀費用に関わる書類 | ・葬儀会社の請求書 ・お寺の領収書 など |
生前贈与に関わる書類 | 贈与契約書 |
相続税の申告のためのチェックシート | – |
上記の書類は、コピーでの提出が認められています。ただし、あとから原本の確認が必要になるケースも考えられるので、紛失しないように保管しておくことが大切です。
「相続税の申告のためのチェックシート」は、申告に必要な書類や情報を整理するためのリストです。このシートを活用することで、書類の漏れや誤りを防ぎ、申告手続きをスムーズに進めやすくなります。
相続税の電子申告で添付書類を提出するにはCDなどが必要
令和4年4月1日以降、e-Taxによる相続税の電子申告では、添付書類をPDF形式で保存し、記録媒体に収めて提出することが可能になりました。
利用できる記録媒体は、以下のとおりです。
記録媒体 | サイズ | 規格 | 記憶容量 | フォーマット |
DVD | 12cm | DVD-R | 片面4.7GB | ISO9660(Level2)/Joliet |
CD | 12cm | CD-R | 650MB、または700MB | |
FD(フロッピーディスク) | 3.5インチ | 2HD | 1.44MB | Windows/MS-DOS(FAT形式) |
MO(光磁気ディスク) | 3.5インチ | ISO/IEC13963、または ISO/IEC15041 | 230MB、または640MB |
これらの媒体を使用する際は、いくつかのルールを守る必要があります。ここでは、押さえておきたいルールについて詳しくみていきましょう。
※本記事に記載のルールは、2025年1月時点のものです。変更になる可能性があるので、詳しくはe-Taxの公式ページよりご確認ください。
保存形式とファイル名
電子申告で提出する添付書類は、すべてPDF形式で保存する必要があります。他のファイル形式は認められていませんので、事前に確認のうえ、必要に応じてPDFに変換しておきましょう。
また、ファイル名には具体性と識別性が求められます。例えば、「相続税添付書類」などの抽象的な名前ではなく、「申告書添付書類_戸籍の謄本」というように、書類の内容が一目でわかる形で命名しましょう。
保存形式やファイル名のルールを守らないと、税務署から内容の確認や再提出を求められる可能性があります。二度手間になってしまうので、要件を満たせるように慎重に準備を進めていきましょう。
提出枚数
電子申告で提出する光ディスクに枚数制限はありません。しかし、1つの媒体に保存するファイルの数は1,000個までと定められています。ファイル数が1,000を超える場合は、複数の媒体に分けるか、ファイルを整理して1,000個以内に収めましょう。
さらに、1ファイルあたりの容量は50MBまでに制限されています。もしファイルのサイズが上限を超える場合は、圧縮ソフトを利用してサイズを縮小するか、複数のファイルに分割してください。
受付番号等情報.csvの作成
電子申告の際は、「受付番号等情報.csv」というファイルを作成する必要があります。このファイルは、光ディスクや他の媒体に保存した添付書類データと、e-Taxを通じて送信した申告書データを紐付ける役割を果たします。
CSVファイルには、申告書データの受付番号や、電子申告で使用する利用者識別番号などの情報を記載しましょう。これによって、税務署が添付書類と申告書の内容を正確に照合できるようになります。
このファイルは、e-Tax上で簡単に作成することが可能です。ここでは、詳しい作成手順を説明します。
※参考:e-Tax「受付番号等情報.csv 作成方法」
H4. e-Taxソフトでの作成手順
e-Taxソフトを利用して「受付番号等情報.csv」を作成する手順は、以下のとおりです。
- e-Taxソフトをインストール・起動する
- メニューから、「メッセージボックス」をクリックする
- 「メッセージボックス(L)」から、光ディスク等に保存した添付書類を紐付ける申告書の名称をクリックする
- メッセージ詳細(受信通知)画面から、「受付番号」をコピーする
- 新規にExcelを開いてA1、A2セルを選択し、右クリックで「セルの書式設定(F)」を選択する
- 表示形式タブから「文字列」を選択し、「OK」ボタンをクリックする
- 6のExcelのA1セルに、3でコピーした「受付番号」を貼り付ける
- メッセージ詳細(受信通知)画面から「利用者識別番号」をコピーする
- 7で作成したExcelのA2セルに、8でコピーした「利用者識別番号」を貼り付ける
※上から「受付番号」、「利用者識別番号」の順に並んでいるかを確認してください
- ファイルの種類(T)「CSV(カンマ区切り)」、ファイル名(N)「受付番号等情報」を入力して保存する
- 保存した「受付番号等情報.csv」データを光ディスク等に保存し、郵送等により提出する
e-Taxソフトを使用する場合、まず国税庁の公式サイトからソフトをダウンロードし、インストールします。起動後、新規でExcelファイルを作成して「受付番号」と「利用者識別番号」を入力してください。
入力が完了したら、ファイル形式をCSVに設定して保存し、内容に誤りがないか確認します。
H4. e-Taxソフト(Web版)での作成手順
e-Taxソフト(Web版)を利用して「受付番号等情報.csv」を作成する手順は、以下のとおりです。
- 「メインメニュー>送信結果・お知らせ>メッセージボックス一覧」から「操作に進む」ボタンをクリックする
- メッセージボックス一覧から、光ディスク等に保存した添付書類を紐付ける申告書の名称をダブルクリックする
- 受信通知画面から、「受付番号」をコピーする
- 新規にExcelを開いてA1、A2セルを選択し、右クリックで「セルの書式設定(F)」を選択する
- 表示形式タブから「文字列」を選択し、「OK」ボタンをクリックする
- 5のExcelのA1セルに、3でコピーした「受付番号」を貼り付ける
- メッセージ詳細(受信通知)画面から「利用者識別番号」をコピーする
- 6で作成したExcelのA2セルに、7でコピーした「利用者識別番号」を貼り付ける
※上から「受付番号」、「利用者識別番号」の順に並んでいるかを確認してください
- ファイルの種類(T)「CSV(カンマ区切り)」、ファイル名(N)「受付番号等情報」を入力して保存する
- 保存した「受付番号等情報.csv」データを光ディスク等に保存し、郵送等により提出する
Web版を利用する場合は、e-Taxのポータルサイトにログインして操作を行いましょう。基本的な流れは、e-Taxソフトをインストールする場合と同様です。
なお、e-Taxソフト(Web版)を利用する際は、利用環境の確認や事前準備セットアップが必要になります。詳しくはこちらのページでご覧ください。
H4. 受付システムでの作成手順
税務署の受付システムを利用して「受付番号等情報.csv」を作成する手順は、以下のとおりです。
- 「メインメニュー>確認>メッセージボックス一覧」から、「確認画面へ」ボタンをクリックする
- 受信メッセージ一覧から、光ディスク等に保存した添付書類を紐付ける申告書の名称をクリックする
- メール詳細画面から、「受付番号」をコピーする
- 新規にExcelを開いてA1、A2セルを選択し、右クリックで「セルの書式設定(F)」を選択する
- 表示形式タブから「文字列」を選択し、「OK」ボタンをクリックする
- 5のExcelのA1セルに、3でコピーした「受付番号」を貼り付ける
- メッセージ詳細(受信通知)画面から「利用者識別番号」をコピーする
- 6で作成したExcelのA2セルに、7でコピーした「利用者識別番号」を貼り付ける
- ※上から「受付番号」、「利用者識別番号」の順に並んでいるかを確認してください
- ファイルの種類(T)「CSV(カンマ区切り)」、ファイル名(N)「受付番号等情報」を入力して保存する
- 保存した「受付番号等情報.csv」データを光ディスク等に保存し、郵送等により提出する
こちらも、ファイルの作成方法は他の方法と大きな差はありません。受付システムのログインページから、必要な操作を行いましょう。
ラベルの記載事項と記載場所
提出する光ディスクのラベル面には、以下の内容を必ず記載しましょう。
- 被相続人氏名
- 所轄税務署名
- 相続開始年月日
- 「相続税申告書添付書類」の文言
また、e-Taxでの申告時は、「相続税の申告書等送信票(兼送付書)」のその他欄に「光ディスク等(申告書添付書類)」、「光ディスク等(申告書第1表の付表3)」などと入力してください。そのうえで送信票の写しを印刷し、書面で光ディスクと一緒に提出します。
添付書類に不備があると再提出を求められる
提出した添付書類に誤りや不足がある場合、書類の形式や規格がルールに沿っていない場合は、税務署から再提出を求められることがあります。再提出を防ぐために、すべての書類を正確に準備することが大切です。
e-Taxから追加送信をすることも可能ですが、この際もファイル形式やサイズなどに関するルールを厳守することが求められます。条件を満たしていない場合、再送信が拒否される可能性があるため注意しましょう。
添付書類の準備や電子申告の作業が困難な方や、パソコンに不慣れな方には、窓口での申告がおすすめです。また、「電子申請を代行してほしい」「相続税申告の添付書類を準備できない」という場合は、税理士に相談することも一案です。
H2. 相続税の添付書類がわからなければ専門家に相談を
相続税の電子申請を行うときは、さまざまな種類の書類を添付しなければいけません。必要な書類が複数あるうえに、電子申請ならではの注意点が豊富なので、手続きが複雑化しやすい点に注意が必要です。
書類の保存形式やファイル名に関するルール、「受付番号等情報.csv」ファイルの作成など、留意すべき点は多岐にわたります。パソコン操作に不慣れな方の場合、適切に申請が行えずに再提出を求められることもあるかもしれません。
「説明を読んでもよくわからない」「自分で申告できるか不安」という場合は、相続税の申告に精通した専門家に相談することがおすすめです。
「相続税申告相談プラザひろしま」では、相続と向き合い30年以上の専門家が、相続税申告のサポートを行っています。電子申告や提出書類の準備でお困りの方は、お気軽にご相談ください。