相続税の延滞税とは|税率や計算方法を解説!

亡くなった方から一定額以上の財産を受け継ぐ相続人は、期限までに相続税の申告・納付を行わなければいけません。万が一、期限までに相続税の申告・納付が間に合わない場合は、利息として延滞税が課され、本来よりも多く納税することになってしまいます。

この記事では、相続税の延滞税について解説します。延滞税の税率や計算方法、課税を回避する方法を知って、相続税の負担増加を防ぎましょう。

相続税の延滞税とは

相続税の延滞税とは、相続税の納付が遅れたときに課されるペナルティです。

相続税は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付しなければいけません。例えば、被相続人が1月10日に死亡した場合、その年の11月10日が相続税の申告・納付期限となるわけです。

相続税の延滞税が課される具体的なケースとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 期限内に相続税の申告・納付が間に合わなかった
  • 期限内に相続税の申告はしたが、納付が間に合わなかった
  • 修正申告や期限後申告を行った
  • 税務調査のときに更正・決定処分を受けてしまった

なお、相続税の申告や納付を適切に行わない場合、延滞税の他にも次のような加算税が課されます

  • 無申告加算税:期限内に申告しなかったときに加算される
  • 過少申告加算税:本来よりも少ない金額で申告したときに加算される
  • 重加算税:悪質な脱税が行われたときに加算される

延滞税やその他の加算税は、税率がそれぞれ異なります。特に、延滞税は法定納付期限から相続税の総額を納付するまでの日数に応じて課されるため、納税が遅れるほど税額が高くなることを押さえておきましょう。

延滞税の税率は2段階ある

相続税の延滞税は2段階に分けられており、納付期限を過ぎた日数に応じて変わります。

納付期限は、次のうちいずれかを指します。

  • 期限内に申告した場合:法定納付期限
  • 期限後申告または修正申告の場合:申告書を提出した日
  • 更正・決定の場合:更正通知書を発した日から1ヶ月後の日

ここでは、延滞税の具体的な税率についてみていきましょう。

納付期限から2ヶ月を境に延滞税の税率は変わる

相続税に課される延滞税の税率は、納付期限の2ヶ月を境として次のように変わります。

  • 納付期限の翌日から2ヶ月まで:年7.3%
  • 納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降:年14.6%

ただし、相続税の延滞税は年によって変動することがあります。支払い義務が発生したときは、あらためて直近の税率について確認しておくことが大切です。

※出典:国税庁「No.9205 延滞税について

直近の相続税の延滞税の税率

直近の相続税の延滞税は、表のとおりです。

期間納付期限の翌日から2ヶ月まで納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降
令和4年1月1日~令和6年12月31日年2.4%年8.7%
令和3年1月1日~令和3年12月31日年2.5%年8.8%
※出典:国税庁「No.9205 延滞税について

本来の延滞税率は先述したとおりですが、低金利状態が続いていることが考慮されて、近年は異なる基準で税率が決定されています。

相続税の延滞税の税率の基準

令和3年1月1日以後における相続税の延滞税は、次のうちのいずれか低いほうの割合が適用されています。

納付期限の翌日から2ヶ月まで:「年7.3%」もしくは「延滞税特例基準割合+1%」納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降:「年14.6%」もしくは「延滞税特例基準割合+7.3%」
※延滞税特例基準割合:前々年の9月から前年の8月までの各月における「短期貸出約定平均金利」の合計を12で割って算出した数値に、1%を加算した割合

なお、令和2年12月31日以前の延滞税率の基準に関しては、次のうちのいずれか低いほうの割合が適用されていました。

納付期限の翌日から2ヶ月まで:「年7.3%」もしくは「特例基準割合+1%」納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降:「年14.6%」もしくは「特例基準割合+7.3%」
※特例基準割合:前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の「短期貸出約定平均金利」の合計を12で割って算出した数値に、1%を加算した割合

また、令和2年12月31日以前の延滞税の具体的な税率は、表のように推移してきました。

期間納付期限の翌日から2ヶ月まで納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降
平成30年1月1日から令和2年12月31日年2.6%年8.9%
平成29年1月1日から平成29年12月31日年2.7%年9.0%
平成27年1月1日から平成28年12月31日年2.8%年9.1%
平成26年1月1日から平成26年12月31日年2.9%年9.2%
※出典:国税庁「No.9205 延滞税について

今後も延滞税の税率基準が変更になる可能性はあるため、その時々に応じた税率で計算を行うことが大切です。

相続税の延滞税の計算方法

相続税の延滞税は、法定納付期限の翌日から納付が完了する日までの日数に応じた税率で課されます。そのため、人によって適用となる税率や日数が異なる点に注意が必要です。

相続税の延滞税を計算するときは、次の式を用います。

(納付すべき本来の税額×納付期限の翌日から2ヶ月までの税率×日数)÷365日(1円未満切り捨て)(納付すべき本来の税額×2ヶ月を経過する日の翌日から完納までの税率×日数)÷365日(1円未満切り捨て)1の金額+2の金額=延滞税の額(100円未満切り捨て)
※出典:国税庁「延滞税の計算方法

なお、相続税の一部を先に納付している場合は、未納になっている部分に限り延滞税の対象となります。

延滞税の具体的な計算例

延滞税の計算方法をよりイメージできるよう、ここでは具体的な例を挙げて金額を計算してみましょう。

例えば、令和4年4月1日までに納付すべき相続税の総額が3,000万円で、そのうち2,000万円を90日延滞したケースがあるとします。この場合、延滞税の対象となるのは2,000万円であり、詳細な金額は次のように計算されます。

(2,000万円×2.4%×61日)÷365日=80,219円(2,000万円×8.7%×29日)÷365日=138,246円80,219円+138,246円=218,465円

延滞税は100円未満の端数が切り捨てになるため、このケースでは218,400円を追加で支払うことになるわけです。

延滞税は免除されることがある

相続税の延滞税には計算期間の特例が設けられており、一定期間における延滞税が免除される場合があります。

免除の適用が受けられるケースと具体的な期間は、次のとおりです。

内容延滞税が免除される期間
自主的に期限後・修正申告をした法定納付期限から1年後の翌日から修正・期限後申告書の提出日まで
税務調査で更正・決定処分を受けた法定納付期限から1年後の翌日から更正通知書が発された日まで
災害などやむを得ない事情がある全期間
※出典:国税庁「延滞税免除ができる場合の事実認定について-国税通則法63条6項4号を中心として-

ただし、重加算税が課されている場合は、延滞税の免除期間は適用されません。

また、延滞税や重加算税を納付せずに放置し続けると、財産が差し押さえられてしまう可能性があります。納付を忘れて督促状が届いてしまった場合は、すみやかに納税しましょう。

延滞税を課税されないためにできること

受け継ぐ財産によっては金額が高くなることも珍しくはない相続税。できることなら期限内に納付を済ませ、延滞税の発生を防ぎたいものです。

延滞税の発生を防いだり負担を軽くしたりするためには、次のような対策を行うことが大切です。

  1. 納付期限を遵守する
  2. 早めに納税資金を確保しておく
  3. 延納・物納を検討する
  4. 自主的に期限後・修正申告を行う
  5. 相続税に詳しい税理士に相談する

やむを得ない理由で納付期限に支払いが間に合わない場合は、延納や物納が認められることがあります。また、納付期限を過ぎたあとでも自主的に期限後・修正申告を行えば、計算期間の特例によって延滞税の負担を軽減できます。

「納税が間に合わない」「延滞税が発生してしまった」など、どのように対応すればよいかわからないときは、相続に詳しい税理士に相談することがおすすめです。一人ひとりの状況に応じた最善策を提案してもらえるので、延滞税の発生や負担増加を防いでくれるでしょう。

相続税は期限を守ったほうがいい!早めの対策なら専門家に相談を

相続税は、申告・納付期限を過ぎると延滞税が課されてしまいます。相続税や延滞税の計算方法は複雑で、なおかつ金額が大きくなるケースが珍しくないため、早めに準備・納税することが大切です。

延滞税の発生を防いだり負担を最小限にとどめたりするには、専門家の知識が不可欠です。専門家からは一人ひとりの状況に応じた控除や特例の案内を受けることも可能なので、人によっては高い節税効果を得られる可能性もあります。

相続税申告相談プラザひろしま」では、相続と向き合い30年以上の専門家が相続手続きのサポートを実施しています。相続税や延滞税でわからないことやお困りごとがあれば、お気軽にご相談ください。