家屋・建物の相続税の評価方法は?計算方法から節税対策まで解説

家屋や建物を相続するときは、他の財産を相続する際と同様に相続税を納める必要があります。財産のなかでも、資産価値が高い不動産。どれほどの相続税が課されるのか、不安に思っている方もいることでしょう。

相続税は「相続税評価額」をもとに算出されるため、納税額を知るために正しい評価方法を知っておくことが大切です。

本記事では、家屋・建物の相続税評価額を計算する方法を解説します。おすすめの節税方法についても紹介するので、ぜひ相続税対策にお役立てください。

家屋・建物の相続税評価額の計算方法

家屋や建物の相続税評価額の計算方法は、「故人が利用していた場合」と「他者に貸していた場合」で異なります

相続税評価額を計算するうえで押さえておきたい主なパターンは、以下の4つです。

  • 故人が利用していた場合
  • 一軒家を他者に貸していた場合
  • 賃貸アパートの場合
  • 亡くなる前にリフォームした場合

まずは、相続税評価額の具体的な計算方法をみてみましょう。

故人が利用していた場合

故人、つまり「相続が発生する前に不動産を所有していた人」が住居や事業場として家屋や建物を利用していた場合、相続税評価額は次のように計算されます。

【相続税評価額】固定資産税評価額×1.0

例えば、固定資産税評価額が1,500万円の建物を相続した場合、相続税評価額は次のとおりです。

相続税評価額=1,500万円×1.0=1,500万円

このように、故人が利用していた家屋や建物を相続するときは、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。

一軒家を他者に貸していた場合

故人が所有している一軒家を第三者に貸していた場合、家屋のうち貸している床面積の割合である「賃貸割合」が100%となります。このケースでは、次のように相続税評価額が算出されます。

【相続税評価額】固定資産税評価額×(1-借家権割合)

借家権割合は、相続税を計算するときに賃貸物件の評価に使われる一定の割合のことです。全国一律で30%と定められています

借家権とは、借主が貸主から建物を借りて使用する権利を意味しています。

例えば、固定資産税評価額が1,500万円の一軒家を相続した場合、相続税評価額は次のとおりです。

相続税評価額=1,500万円×(1-0.3)=1,050万円

つまり、賃貸割合100%の一軒家を第三者に貸していた場合、家屋の評価額は3割軽減されるということです。

賃貸アパートの場合

故人が賃貸アパートを所有していた場合は、次のように相続税評価額が算出されます。

【相続税評価額】固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

アパートの相続税評価額は、賃貸割合に応じて変わる点を押さえておきましょう。賃貸割合とは、全部屋のうち実際に貸し出されている部屋の割合です。貸し出されている部分の合計床面積を、全体の面積で割って算出します。

また賃貸アパートであっても、借家権割合は30%です。

例えば、固定資産税評価額が1,500万円のアパート、合計床面積300㎡、貸している部屋の合計床面積150㎡のアパートを相続した場合、相続税評価額は次のようになります。

賃貸割合=150㎡÷300㎡×100=50%   
相続税評価額=1,500万円×(1-0.3×50%)=1,275万円

なお、貸している床面積が広いほど評価額は下がり、相続税は安くなります。

亡くなる前にリフォームした場合

故人が亡くなる前にリフォームをしており、なおかつ固定資産税評価額が改定されていない場合は、そのことを加味して相続税評価額を算出しなければいけません。

計算方法は次のとおりです。

【相続税評価額】リフォーム前の家屋の固定資産税評価額+(リフォーム費用-死亡日までの償却費)×70%

なお、死亡日までの償却費は次の式で算出できます。

【死亡日までの償却費】リフォーム費用×90%×経過年数÷耐用年数

経過年数は、リフォームの完了日から被相続人が亡くなるまでの年数を指します。1年未満の場合、端数は切り上げとなります。

家屋の耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」から調べることが可能です。木造住宅は22年、鉄筋コンクリート造の住宅は47年と耐用年数が設定されています。

例えば、以下のケースにおける相続税評価額は次の通りです。

  • 被相続人が亡くなる10年前に木造住宅をリフォームした
  • リフォーム前の固定資産評価額は1,500万円だった
  • リフォームにかかった費用は500万円だった
死亡日までの償却費=500万円×90%×11年÷22年=225万円  
相続税評価額=1,500万円+(500万円-225万円)×70%=1,692万5,000円

参考:e-Gov法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」、国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表

固定資産税評価額の調べ方

相続税の計算に欠かせない固定資産税評価額は「固定資産税の課税明細書」に記載されています。この明細書は毎年5月ごろに市区町村から送られてくるため、そちらで確認しておきましょう。

「固定資産税の課税明細書」が手元にないときは「名寄帳(なよせちょう)」からも固定資産税評価額を確認できます。名寄帳は、市区町村が所有者ごとにまとめている固定資産税課税台帳で、役所の資産税課で取得可能です。

なお、名寄帳を取得するときは「固定資産の評価証明書」も併せて入手しておくことがおすすめです。相続登記の際に必要となる書類なので、手続きの手間を軽減できます。

家屋・建物の節税対策

相続する資産の中でも価値が高くなる家屋や建物は、そのぶん相続税も高くなる傾向にあります。そのため、少しでも相続税を節税したいと考えている方は多いかもしれません。

実は、相続税は以下の2つの方法で節税することが可能です。

  • 他者に貸し出す
  • 空き家を減らす

それぞれの方法について詳しくみてみましょう。

他者に貸し出して相続税評価額を下げる

一軒家やアパートは、第三者に貸し出すことで相続税の負担を軽減できます。借家権割合によって相続税評価額を30%下げられるためです

ただし「親族に無償で家屋を貸している場合」「相場より著しく安い家賃で貸し出している場合」は、賃貸借として認められません。
必ず、家賃は相場並みの価格に設定しましょう。

空き室を減らして相続税評価額を下げる

故人が賃貸アパートを所有していた場合、空室を減らすことで相続税評価額を下げることが可能です。貸し出している床面積が広いほど評価額は下がり、相続税が安くなります。

たとえ現在空室がある物件でも、その状態が一時的なものであれば賃貸割合の計算に組み込むことが可能です。ただし、一時的な空室とみなされるためには次のような条件を満たす必要があるため、注意しましょう

  • 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきた
  • 賃借人の退去後、すみやかに新しい賃借人の募集が行われた
  • 空室の期間、他の用途で使われていない
  • 空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度である
  • 課税時期後の賃貸が一時的なものではない

出典:国税庁「貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲

アパートの空室が「一時的な空室」に該当するかどうかについては、さまざまな事実関係に基づいて総合的に判断されます。そのため、1か月以上の空室があっても他の要件を満たせば、一時的な空室であると認められることがあります。

相続税の計算は複雑!気軽に専門家に相談を

家屋や建物の相続税は、固定資産税評価額をもとに4つのケースに分けて計算する必要があります。また、相続税の評価をするときは、土地と家屋・建物を完全に分けて評価するわけではないため、計算が複雑になる傾向にあります。そのため、自分で計算することが難しいと感じてしまう方は多いかもしれません。

「家屋の相続税を正しく評価したい」「自分で計算できない」という場合は、税理士事務所などのプロに相談することがおすすめです。30年以上にわたり相続税と向き合っている「相続税申告相談プラザひろしま」では、家屋の相続税評価をサポートしております。お困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。