父母から子へ、祖父母から孫へ。財産の贈与を考えている、あるいはすでに贈与してもらった場合、贈与税申告にはどのような書類が必要になるのか悩んでいませんか?
この記事では、贈与税の申告が必要になるケースや必要書類の種類、添付書類まで解説します。そもそも、自分の場合は贈与税申告が必要なのかどうか把握できていない人も、この記事を参考にしてみてください。
贈与税の申告は「贈与を受けた人」が申告する
そもそも贈与とは、贈与者が受贈者へ無償で財産を引き渡すことです。贈与は贈与者と受贈者の同意のもと、成立する契約です。贈与者が一方的に財産を渡すのは贈与にはなりません。
そして贈与税は、贈与を受けた側の人が申告するものです。1月1日〜12月31日の1年間に行われた贈与の総額に対し、翌年の2月1日〜3月15日に申告・納税します。たとえば、2023年4月1日に贈与を受けた場合、贈与を受けた人は2024年の2月1日〜3月15日の間に贈与税申告を行う必要があります。
贈与税の申告が必要になるケース
前述のとおり、贈与税は原則として贈与を受けたすべての財産に課せられます。しかし、扶養義務者から生活費や教育費をもらって、目的の範囲内で使用した場合は課税対象にはなりません。たとえば、両親の扶養に入っている大学生が両親から学費として200万円を受け取り、目的のとおり学費として大学へ納付した場合は贈与税が不要です。
また贈与の目的によっては、贈与税が非課税となる特例が設けられていることもあります。ここでは、贈与税の申告が必要になるケースを3つ紹介します。
1年間で110万円以上の贈与を受けた
繰り返しになりますが、贈与税の算出期間は1月1日〜12月31日の1年間。この1年間で受けた贈与財産の総額が110万円を超える場合、贈与税申告が必要です。
一方、1年間の贈与財産の総額が110万円以下であれば、贈与税は非課税となります。この「110万円以下」というのは、贈与者1人あたりではなく、全員の総額です。たとえば、贈与者2人から受け取った贈与財産がそれぞれ50万円、70万円のケースでは、総額120万円の贈与となるため、110万円を超える10万円に対する贈与税が必要となります。
贈与税課税対象=50万円+70万円-110万円=10万円
贈与者が2人以上でも、贈与財産の総額が110万円以下なら、贈与税は課せられません。
贈与税が非課税になる特例を適用する
贈与税が非課税になる特例を適用する場合も、申告が必要です。たとえば、以下の特例を利用したい場合は、贈与税申告して制度を適用させなくてはなりません。
贈与の種類 | 非課税枠 | 条件の例 |
住宅の購入資金 | 省エネ等住宅の場合は1,000万円まで上記以外は500万円まで | 父母・祖父母などの直系卑属からの贈与贈与を受けた年の1月1日で18歳以上贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下自己の居住用住宅の新築・取得・増改築等が目的 |
教育資金 | 1,500万円まで | 父母・祖父母などの直系卑属からの贈与30歳未満贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円以下 |
結婚・子育て資金 | 1,000万円まで | 父母・祖父母などの直系卑属からの贈与18歳以上50歳未満贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円以下 |
配偶者への住宅贈与 | 基礎控除110万円のほかに、最高2,000万円まで | 婚姻期間が20年以上の夫婦配偶者から贈与された財産が居住用不動産または居住用不動産の取得費用 |
上記の特例を適用して、非課税枠により贈与税が0円だったとしても、贈与税申告は必要です。ただし、教育資金と結婚・子育て資金については、適用条件内および非課税枠内であれば金融機関から非課税申告書が税務署に提出されるため、原則として贈与税申告の必要はありません。金融機関から引き出した金額に対する領収書は、その都度金融機関に提出する必要があります。
また、贈与者が亡くなったときに贈与財産が使いきれていなかった場合は、生前贈与として相続税の課税対象となる点に注意しましょう。
相続時精算課税制度を利用する
贈与税申告は、相続時精算課税制度を利用する場合にも必要となります。
相続時精算課税制度とは、財産を贈与されたときではなく、相続が発生したときに課税される制度です。贈与税の非課税枠は2,500万円で、相続時に贈与財産と相続財産の総額に対して相続税が課されます。贈与財産が110万円以下の場合は贈与税申告が不要と説明しましたが、相続時精算課税制度を利用する場合は申告が必要です。
贈与税申告に必要な書類
贈与により、贈与税申告が必要だと判明したら、まずは申告に必要な書類を準備しましょう。贈与税申告に必要な書類は、国税庁のホームページから取得できます。
国税庁のホームページで書類を取得する場合、画面の案内に従って贈与の内容を入力すると、贈与税額を自動計算できるため便利です。贈与税申告書は相続税申告にも必要になるため、まずはどのような書類があるのか、自分に必要なのはどのような書類なのかを把握しましょう。ここでは、贈与税申告に必要な書類の種類と内容について説明します。
贈与税申告書第1表【全員必要】
贈与税申告する際、全員提出するのが「贈与税申告書第1表」です。贈与税申告書第1表では、受贈者と贈与者に関する情報や贈与された財産の内容、税額などを記入します。贈与税の配偶者控除の特例を適用する場合は、第1表の所定の欄に内容を記入する必要があります。
贈与税申告書第1表の2【住宅取得等資金の非課税に必要】
「贈与税申告書第1表の2」は、住宅の購入資金贈与の非課税枠を適用する場合に必要な書類です。自宅を新築・購入・増改築するとき、父母や祖父母などにその資金を援助してもらったケースで「贈与税申告書第1表の2」の必要箇所に内容を記入して提出します。
ただし、「贈与税申告書第1表の2」に記入できる贈与者は2名までなので、贈与者が3名以上の場合は複数枚使用しましょう。
贈与税申告書第2表【相続時精算課税に必要】
相続時精算課税制度を適用したい場合は、「贈与税申告書第2表」も準備します。以下の条件を満たす場合、相続時精算課税制度を利用できるケースがあります。適用できるか自分で判断できないときは、相続税に詳しい税理士に相談してみましょう。
- 60歳以上の父母または祖父母からの贈与
- 18歳以上の子または孫への贈与
条件を満たしたうえで、「贈与税申告書第1表」と「贈与税申告書第2表」を提出すれば、2,500万円の非課税枠が利用できます。
贈与税申告書に必要になる添付書類
実は、贈与税申告では申告書だけでなく添付書類も必要になります。ただし、全員が必要になるものもあれば、適用する特例によって必要な添付書類が異なります。ここでは、共通の添付書類と特例ごとに必要になる添付書類の種類についてみていきましょう。
全員必要になる添付書類
贈与税申告する全員に共通して、必要になる添付書類は以下の2つです。
- 本人確認書類
- 贈与財産の価額を証明する書類
それぞれ詳しく解説します。
本人確認書類(マイナンバー関係書類)
本人確認書類は、相続税申告の方法によって異なります。税務署の窓口で贈与税申告書を提出する場合、本人確認書類は提示するだけで写しは不要です。一方、贈与税申告書を郵送する場合、本人確認書類の写しを添付する必要があります。本人確認書類がマイナンバーカードではない場合、マイナンバー通知書やマイナンバー入りの住民票に加え、免許証やパスポートなどの身分確認書類が必要です。
また、e-taxで相続税申告するときはマイナンバーカードが必須となります。
相続税申告の方法 | 提示・提出方法 | 必要な本人確認書類 |
税務署の窓口 | 提示 | マイナンバーカード、もしくはマイナンバーが分かる書類+身分確認書類 |
郵送 | 写しを提出 | マイナンバーカード、もしくはマイナンバーが分かる書類+身分確認書類 |
e-tax | 提示 | マイナンバーカード |
身分確認書類として使えるのは、主に以下の書類です。
- 免許証
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 在留カード
- 公的医療保険の被保険者証
贈与財産の価額を証明する書類
贈与財産の価額を証明する書類も贈与税申告の際、全員提出する必要のある書類です。贈与税申告書の各表にも、贈与財産の価額を記入する欄が設けられています。
ただし、価額を証明する書類の提出が義務付けられているわけではありません。そのため、証明書類については未提出でも申告が完了します。しかし、土地の贈与があった場合は土地の評価証明書を価額の根拠となる書類として添付しなくてはなりません。
配偶者控除の特例の添付書類
贈与税の配偶者控除を受ける場合は、婚姻関係が配偶者として条件を満たしているか、対象の不動産が適用条件を満たしているかを確認するための書類が必要です。そのため、以下の書類を準備しましょう。
- 受贈者の戸籍謄本(秒本)
- 戸籍附票の写し
- 対象の居住用不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
受贈者の戸籍謄本と戸籍附票は、いずれも贈与があった日から10日を経過した日以降に作成されている必要があります。また、登記事項証明書は申告書に不動産番号を記入すれば添付は不要です。
住宅取得等資金の非課税の添付書類
住宅の購入資金として住宅取得等資金の非課税制度を適用したい場合は、適用条件を満たすことを証明する以下の書類を添付します。
- 受贈者の戸籍謄本など氏名・生年月日・受贈者との関係を証明するもの
- 源泉徴収票など受贈者の合計所得金額を確認できるもの
- 工事請負契約書や売買契約書の写し
- その他住宅に関する所定の書類
源泉徴収票は、所得税の確定申告書を提出している場合は不要です。また、工事請負契約書や売買契約書は、契約の相手方が確認できる書類に代えることもできます。
相続時精算課税の添付書類
相続時精算課税制度を利用する場合、以下の書類を添付しましょう。
- 相続時精算課税選択届出書
- 受贈者・贈与者の戸籍謄本(秒本)
相続時精算課税選択届出書は、国税庁のホームページからダウンロード可能です。また、相続時精算課税選択届出書の控えは相続税申告の際に必要となります。住宅等取得資金に対し、相続時精算課税制度を適用したい場合は、工事請負契約署の写しや売買契約署の写し、登記事項証明書、その他住宅に関する所定の書類が必要です。
贈与税と相続税は関係しているので専門家に相談を!
贈与とは、贈与者と受贈者の同意のもと成立する契約です。贈与税は財産を贈与される側、すなわち受贈者が申告・納付します。贈与税申告に全員が必要な書類は、贈与税申告書第1表です。第1表その2は住宅等取得資金の特例、第2表は相続時精算課税制度の適用に必要となります。
申告する際に必要な添付書類は、本人確認書類と贈与財産の価額を証明する書類です。そのほか、特例を適用する場合はそれぞれ添付書類が必要なケースもあります。
贈与税申告する必要があるのか、申告に必要な書類の種類は何か、どのように申告すれば良いか、贈与税に関する悩みは「相続税申告プラザひろしま」までお気軽にご相談ください。